史上最大のゾウ調査、アフリカ上空を46万キロ

富豪ポール・アレン氏が出資、ビッグデータが保護活動を変える

2016.01.07
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 それでもコヒ氏は、この恐ろしい事実を知ることができてよかったと語る。「この調査がなければ、われわれはすべてうまくいっていると思い込んだままだったでしょう。この結果は政府に対して、何らかの対策を取る必要があるというメッセージになりました」

 こうしたデータが判明して以来、激しい減少が見られたセルース猟獣保護区では運営・警備対策費用が40%増額され、ルングワ猟獣保護区などの他のエリアにも300人のレンジャーが配置された。

 タンザニアでの調査結果からはまた、ルアハ国立公園のゾウが、これまで考えられていたよりも広い範囲を動き回っていることが判明した。政府はこれに対処するため、公園を大幅に拡大した。

 ゾウの生息数はモザンビークでも激減していたが(5年間で48%の減少)、一方で調査によって見えてきた明るい側面もある。

 ボツワナのゾウの数は安定しており、2014年には推定12万9939頭が生息していた(2013年からほぼ横ばい)。またウガンダでは、ゾウの頭数が驚くほど増えている。密猟が横行した1970年代、1980年代には1000頭に満たなかったものが、現在では約5000頭に達している。(参考記事:「【動画】くしゃみをする子ゾウがかわいい」

ボツワナのオカバンゴ・デルタはゾウの保護区でもある。写真は「グレート・エレファント・センサス」の調査中に撮影された1枚。(Photograph Courtesy the Great Elephant Census: A Paul G. Allen Project)
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オープンソース化で持続性を高める

「大規模調査の数字は重要です」と語るのは、この調査の技術アドバイザー、ハワード・フレデリック氏だ。

「しかしそれ以上に重要なのは、将来的にもこうした調査を続けることと、そこから見えてくる傾向です。地上で働いている保護活動家は、ゾウの絶対数にはあまり注目していません――彼らが本当に知りたがっているのは、ゾウの数が減っているのか、増えているのかということです。それがわかれば、それなりの対応ができるからです」(参考記事:「ゾウ密猟の巣窟2カ所を特定、糞のDNA鑑定から」

 テッド・シュミット氏のチームはこの先、アフリカでの野生動物調査の技術、精度、持続性を高めていくことを目指している。

 たとえば彼らは、ユニークなデータロガー・ユニット(専用に開発されたソフトウエアを搭載したコンピューター)を開発した。これを飛行機のコックピットに持ち込めば、適切な高度を正確な航路で進んでいるかどうかをチェックすることができる。

 こうした技術の問題点は「開発され、配備されるまではいいのですが、やがて使われなくなってしまうことです」とシュミット氏は言う。

 将来の継続的な利用をうながすために、「グレート・エレファント・センサス(GEC)」専用に開発されたアプリやソフトウエアは、すべてオープンソースとなっている。バルカン社のエンジニアたちは現在、タンザニア野生動物研究所の古くなったデータベースシステムを、GECのデータベースと交換する作業を進めている。

 すべての情報を1つのシステム内に集約すれば、ゾウの生息数全体の増減を比較する作業は格段にスムーズになるはずだ。

 シュミット氏は言う。「これはグレート・エレファント・センサス計画の重要な一要素なのです。調査プロジェクトから波及した、こうした舞台裏のさまざまな影響が、データを活用したアフリカでの保護活動を大きく変えていくことでしょう」

文=Paul Steyn/訳=北村京子

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