【動画】野生復帰したトラに子ども、初めて確認

孤児として保護され、野生に帰ったアムールトラが自然繁殖に成功

2015.12.16
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【動画】ロシアの極東にある自然保護区でとらえられた動画。孤児として保護されたのち、2年前にこのエリアに再導入されたトラが、2頭の子どもを連れている様子が映っている。(映像提供:バスタク自然保護区)

 人里離れたロシアのバスタク自然保護区で、母親のトラが松の木をなでながら、やんちゃな生後2カ月の子どもたちに、他のトラの匂いや、動物の捕食方法などを教えている動画が撮影された。

 ロシアの極東に広がるこの保護区には、最近までアムールトラの匂いはほとんどなかった。

 過去40年のうちに、生息地の喪失、動物園向けの捕獲、毛皮や骨を目的とした密猟の影響で、アムールトラの数が激減し、絶滅が危ぶまれている。現在野生に残るのはおよそ500頭。そのほぼすべてが、ロシアの極東に暮らしている。(参考記事:「ロシアで野生トラが増加、500頭超に」

 しかし、今回撮影された動画は、希望を与えてくれそうだ。孤児として保護され、後に自然に返されたトラ「ゾールシカ」(ロシア語で「シンデレラ」を意味する)が、自分の子をもっていることがわかったからだ。

 自然へ再導入されたアムールトラの繁殖が認められたのは、これが初めて。自然保護活動家に言わせると、これはわずかながらも歴史的な復活の兆しかもしれない。

 ゾールシカの再導入について、「私たちはまだ実験の途中です」と語るのは、野生生物保護協会(WCS)でディレクターを務めるデール・ミケル氏だ。「今回子どもが誕生したことで、放棄されたトラを再導入することで、通常の生活を送れることはわかりました。でも、自分に母親がいなかったトラが、果たして子どもを育てられるかどうかは大きな疑問の1つです」

生後5か月で保護されて

 ゾールシカが密猟で母親を失ったのは2012年のこと。まだ生後5カ月のころだった。

 お腹を空かせて息が絶えかけていたゾールシカをハンターが見つけ、近くの野生生物管理者のもとへ運んだ。看病のかいあって健康を取り戻したゾールシカはその後、アレクセーエフカ・リハビリテーションセンターに移された。

 そこでは、トラの専門家により、人間との接触が厳しく制限された。人に慣れずに、自力で狩りをする力を付けさせるためだ。生後20カ月のとき、アムール川沿いの低湿地帯のすぐ西にあるバスタク自然保護区の山に返された。日本海に近いシホテアリニ山脈にあるこの保護区は、トラでさえもたどり着くのが困難なところだ。

【動画】ゾールシカが野生に戻る瞬間を撮影した(解説は英語です)

シンデレラ・ストーリーは終わらない

 イノシシやアナグマなど、バスタク保護区にはエサが多いため、ゾールシカとその子どもたちが生き抜くことは可能だと専門家は言う。

 それでも困難は少なくない。ゾールシカの行動圏は約400平方キロメートルと広く、保護区の外を歩き回る可能性が高い。保護区の外では、トラ需要の高まりを受け、密猟という大きな脅威が待ち受けている。中国の闇市場ではトラの毛皮や骨が富裕顧客層に販売されており、そうした市場に向けたトラの「養殖」も増えているのだ。(参考記事:「消えゆく王者 トラに未来はあるか」

 それでも専門家らは、彼女を応援している。保護団体「パンセラ(Panthera)」やケープタウン大学、コーネル大学で大型のネコ科動物を研究するジェニー・R.B・ミラー氏は、メールでこう述べた。「ゾールシカが狩りをできるようになり、さらに自然繁殖に成功したことは非常に珍しく、祝福に値します。トラは絶滅の危機に瀕しており、保護のためには創造力を働かせなければなりません。それと同時に、密猟や人間との戦いなどのプレッシャーを取り除いてやることも必要でしょう。ゾールシカのストーリーは、まだ終わらないのです」(参考記事:「トラ減少で希少なウンピョウが新たな標的に?」

文=Karen de Seve/訳=堀込泰三

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