人類発祥の地は東アフリカか、南アフリカか

新種ホモ・ナレディの発見で、「世紀の謎」をめぐる論争が再燃

2015.09.16
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2008年、南アフリカの再浮上

 南アフリカには課題が多く、大きなブレークスルーはあまり期待できない。しかしこのところ、リー・バーガーが驚異的な化石群を発見したことで、人類のゆりかごに注目が戻っている。バーガーのチームは2008年、マラパと呼ばれる発掘現場で、かつてない数の化石を発見し、2つの新種を人類系統樹に付け足した。興味深いことに、それらは現代的な特徴と原始的な特徴をあわせ持っていたため、南アフリカが真の人類発祥の地として再び名乗りを上げた。

 マラパから16キロのライジングスター洞窟で発見されたホモ・ナレディの骨格は、現在年代特定の結果を待っている状態であり、人類発祥におけるその役割はまだはっきりしていない。しかし、バーガーがマラパで発見したアウストラロピテクス・セディバは、ウラン-鉛年代測定法により年代が特定された。200万年前とされたこの種は、先ごろ東アフリカのレディ・ゲラルで発見されたヒト属最古の280万年前の顎ほど古くはなかった。(参考記事:「最古のヒト属化石を発見、猿人からの進化に新証拠」「セディバ猿人、ヒト属の系統樹に異議?」

現代人(ナショナルジオグラフィックの招へいエクスプローラー、リー・バーガー)と新発見のホモ・ナレディを並べた合成画像。両者には、同じ属の基本的要件以上の関連性をもつ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
[画像のクリックで拡大表示]

 アウストラロピテクス・セディバは、その年代にかかわらず、ヒト属の最も新しい祖先の最有力候補であるとバーガーは主張している。レディ・ゲラルの顎より古い同種の化石が、まだ発見されていないだけだと。これは根拠のない主張のように聞こえるが、他の研究者が13の研究データを集めて別の分析を行った結果からも、同じ結論が得られている。つまり、人類のゆりかごこそ、人類発祥の地なのだろうか? そうとも限らない。

 古生物学者のブライアン・リッチモンドは言う。「セディバはおそらくヒト属と共通の祖先を持ちますが、セディバ自身は人類の直接の祖先としては遅すぎるようです。そして、その共通の祖先が南アフリカにいたのか、東アフリカにいたのか、はたまたアフリカのまったく異なる場所にいたのかは、まだわかりません」

 バーガーの主張に対する意見はどうあれ、マラパとライジングスターのおかげで南アフリカの洞窟に注目が集まっているのは事実であり、この地での新発見によって、人類発祥のシナリオはいっそう複雑な様相を呈している。それに、化石ハンターはまだ、アフリカ大陸の97%近くを調査していない。

 古生物学者のパトリシア・クレイマーは言う。「人類の起源を500ピースのジグソーパズルだと考えてください。これまでに、私たちはたぶん東アフリカから8ピース、南アフリカから4ピースを見つけました。多少の傾向はわかるかもしれませんが、これだけでは全体像はまったくつかめません。そして、東と南のどっちが重要ということではなく、私たちには両方が必要なのです」

※ホモ・ナレディ発見についての詳細は、9月30日発売の『ナショナル ジオグラフィック日本版』2015年10月号で図解や写真を含めて詳しく紹介します。

『ナショナル ジオグラフィック日本版』2015年10月号

文=Evan Hadingham/訳=堀込泰三

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