「クジラはどうやって音楽を聴くって? そりゃ、Orca-straだよ!」
(訳注:くじらを意味するOrcaとオーケストラをかけたジョークです)
トカゲにこのジョークを言ったら、しーんとされた。おかげで、ある読者から寄せられた「動物って笑うんですか?」という質問の答えが気になったのである。(参考記事:「イルカと話す日」)
サルのようにはしゃぐ
現在、笑うことが知られている動物は、類人猿とラットだけだ。
米カリフォルニア州を拠点とするゴリラ財団のペニー・パターソン理事長によると、手話をすることで有名なニシローランドゴリラのココは、「私、不器用で笑っちゃいます」と手話で言いながらケタケタと笑うそうだ。
ココは、特に気に入った訪問者には、「ホーホー」という笑い声も披露する。
2009年、英国ポーツマス大学の心理学者マリーナ・ダビラ・ロス氏は、オランウータン、ゴリラ、チンパンジーなどの若い霊長類を対象に、動物くすぐり実験を行なった。結果、それらのサルは笑いを返した。
笑いの進化を研究しているロス氏によると、私たち人類は、今から1000万年から1600万年前に生きていた類人猿と共通の祖先から、笑う能力を継承しているという。
先週、学術誌『PLOS ONE』に掲載された同氏の最新研究ではさらに、発声を伴う笑いかどうかを問わず、チンパンジーが歯を見せて微笑むことが示された。
つまり、チンパンジーは「私たちが考えているよりも明確かつ多彩な方法でコミュニケーションできる」ようだ。これは人が話しながら声を出さずに微笑んだり、笑いながら微笑むのとよく似ている。これら2つの微笑みは、違う感情を表すものだ。
ラットも喜ぶ
くすぐり実験は、ラットにも行われた。
米ワシントン州立大学の心理学者であり心理科学者でもあるヤーク・パンクセップ氏は、ラットをくすぐるとハッピーノイズを出すことを発見した。
2000年に発表された論文によると、科学者がこのげっ歯類をくすぐったところ、遊んでいるときに出すのと同じさえずるような音を出した(この音は人間の可聴域を超えている)。
くすぐられるのが好きで、くすぐる手を追いかけてくるラットもいた。(参考記事:「ネズミの恩返し行動を発見、人間以外で初」)
以降、パンクセップ氏らは、遊びの研究がビジネスになることを証明してきた。たとえば、ラットの笑いを司る脳回路が人間の感情研究にも使えることを発見したり、哺乳類の脳でも同じ領域に7つの基本的感情システムがあることを発見した。
同氏の研究は、うつ病対策にも役立っている。臨床試験中の抗うつ剤「CLYX-13」は、同氏によるラットの笑い研究に端を発する。
これは、「精神医学の発展を目的として動物の感情を真剣にとらえたことで達成された」事例のひとつに過ぎないという。
遊びが笑いにつながる
ラットや類人猿は賢いから笑うと思われがちだが、笑いに知性は不要であるとパンクセップ氏は言う。(参考記事:「悲哀の感情、“死を悼む”ゴリラ」)
「逆に考えた方がいいでしょう。つまり、どんな種の動物でも、遊ぶことが社会的知性を強化するのだと」
つまり、笑う動物を見つけるには、その動物が楽しいときに出す音に耳を澄ませるとよいという。