夢の超音速列車「ハイパーループ」、成否の鍵は?

2016年早々に米カリフォルニアでの着工が決定。2018年には乗客も

2015.06.08
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乗客を運ぶアルミ製ポッドの完成予想図(RENDERING BY HTT/JUMPSTARTFUND/OMEGABYTE 3D)
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2. まったくの新技術ではない

 ハイパーループは、加圧されたチューブ内で、空力設計されたアルミ製ポッドを磁石とファンを使って駆動する仕組みだ。鉄製チューブの天井にはソーラーパネルとバッテリーパックが装備され、夜間や曇天時にもエネルギーを利用できる。

「(ハイパーループは)当社が開発した電磁システムで動きます。当社は、心地よい加速と減速を保証する技術を認可、供与しています」とアールボーン氏。

 新しい特徴を備えているとはいえ、プロジェクトには既存技術が多く用いられる。20世紀中ごろに銀行などでメッセージの受け渡しに使われていた気送管を大規模にした最新バージョンと考えるとよい。

「私たちは、鉄塔のつくり方を知っています。チューブのつくり方、真空のつくり方を知っています。浮上のさせ方を知っています。あとは、それらを同時に実現し、経済学を活かすこと。それが最大の課題なのですが……磁石が非常に高価なのです」

 アールボーン氏によると、ハイパーループは磁気浮上式のリニアモーターカーとは異なる。なぜなら、ハイパーループのポッドは、鉄塔を使って地上5~6mの高さに取り付けられたチューブ内を移動するからだ。

 アールボーン氏のチームは、貨物、エコノミー、ファーストクラスの3種類のポッドを用意する計画だ。時速320kmから480kmの間で、それぞれに速度が異なる。「スピード感を楽しむ人もいれば、80歳以上の人にはもう少しソフトでゆっくりしたカプセルの方がいいでしょう」

3. 高速鉄道よりも低コスト

 マスク氏は、ロサンゼルスからサンフランシスコをハイパーループで結ぶコストを、60億から100億ドルと見積もっている。これは、カリフォルニア州が計画している高速鉄道(600億ドル超)のほんの一部に過ぎない。

 また、HTTによれば、そのようなコースは、10年間をかけ、160億ドルで作れるそうだ。「他の都市でもこの価格帯を維持できれば、都市部在住・在勤の人々の生活は劇的に変わるだろう」と、同社が2014年12月に発行した76ページの白書に書かれている。

 アールボーン氏によると、ハイパーループが鉄道より安く済む理由は、既存の高速道路上に鉄塔を使ってチューブを設置するため、線路を敷く必要がないうえに、土地を獲得する費用がかからないから。悪天候や自然災害時でも運行可能だという。

4. 安全面、財政面、その他の課題

 信奉者が言うほど安くあるいは安全にハイパーループが建設できると誰もが確信しているわけではない。鉄塔は地震に耐えられるのか? ソーラーパネルで十分な電力を得られるのか? 急な離陸や減速で、乗客は酔わないのか? トイレに行きたくなったらどうするのか? ポッド内にトイレを設置するのか?

 ハイパーループは、カーブや昇降で乗客が酔わないように、できるだけ真っ直ぐなコースを取る必要がある。しかし、距離が長くなるほど、既存の高速道路ではトンネル、カーブ、坂が増えるものだ。

5. 最長のコースは米国外の可能性も

 アールボーン氏によると、ハイパーループの乗り心地は、地下鉄や飛行機のそれと似ているという。カリフォルニアに作る8kmのコースは、2017年初頭には完成させ、1年間かけてシステムを最適化したのち、乗客を乗せる計画となっている。

 しかし、8kmでは音速に達することができないため、「残念ながら、小規模ではすべての試験を行うことができない」。それができたら、「もっと長距離に着手する」そうだ。クエイ・バレーの開発業者はコース延長のための資金調達を望んでいるが、まだ何も決まっていない。もっと長いコースを手早く作るには、米国は他国よりも、想定される障害が多い。

「駆け引きが少なくて済みそうな、海外からの問い合わせがたくさんあります」。アールボーン氏は、シンガポールとアラブ首長国連邦のドバイを挙げた。「最初は米国で実現したい。でも、政治、訴訟、通行権などの問題でそれは難しそうです」

文=Wendy Koch/訳=堀込泰三

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