絶滅危惧ノコギリエイの単為生殖を初確認

雄と交わることなく子を産んでいた

2015.06.04
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米フロリダ州エバーグレーズ国立公園の沖あいに生息するスモールトゥース・ソーフィッシュ。(Photograph by Doug Perrine, Nature Picture Library/Alamy)
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 ノコギリエイの1種で、絶滅が危惧されているスモールトゥース・ソーフィッシュには、雌が雄と交わることなく子どもを産む「処女懐胎」のような能力があることがわかった。学術誌『Current Biology』に発表された研究によると、処女懐胎、つまり単為生殖によって、これまでに7匹の子供が生まれているという。(参考記事:「アミメニシキヘビの単為生殖を初確認」

 単為生殖は、サメやヘビ、鳥などにも見られるが、野生のエイの仲間で確認されたのは今回が初めて。米ストーニーブルック大学の遺伝学者で、今回の論文の筆頭著者であるアンドリュー・フィールズ氏は、交尾相手が見つからない環境で子どもを作らなければならない場合、単為生殖は非常に有効な手段だと語る。

 成長すると全長6メートルにもなるスモールトゥース・ソーフィッシュは、米国では絶滅危惧種に指定されている。具体的な生息数は判明していないが、ヨーロッパ人が北米に入植したころにいた数の5%程度まで減っていると推測される。

雄はいらない?

 単為生殖においては、雌が自分の卵子を自分で受精させるかのようにして子どもを産む。具体的には卵細胞から分裂した構造体(極体)が、ふたたび卵子と融合するわけだが、これは精子が受精の際に卵子と融合する過程とよく似ている。単為生殖によってできた子どもは厳密には母親のクローンではないものの、遺伝子はすべて母親から受け取ったものだ。(参考記事:「オスがいても“単為生殖”する野生ヘビ」

 今回、フィールズ氏がスモールトゥース・ソーフィッシュの単為生殖を発見したのは偶然のできごとだった。米フロリダ州の南西部で2004年から2013年の間にタグ付けされた190匹の個体データを調べていた際、フィールズ氏はおかしなことに気が付いた。7匹の個体の遺伝子が、彼らが1匹の親から生まれたことを示していたのだ。

 最初こそ驚いたものの、彼はじきにスモールトゥース・ソーフィッシュのような希少種であれば、単為生殖が起こってもおかしくないと納得したという。

 フロリダ自然史博物館が進めているサメ研究プログラムの責任者ジョージ・バージェス氏は、集団がまったく同じ遺伝子を持つことは、数の少ない種にとって致命的だと語る。遺伝子の多様性が低いと、有害な変異や環境の変化に対して脆弱になるからだ。

子どもの子どもは生まれるか

 単為生殖は野生生物にとってよくある現象なのだろうか。それとも絶滅が危ぶまれるほど数が少なく、個体同士がめったに出会わないからこそ起こる特殊なケースなのか、あるいはノコギリエイだから起こった、この種に独特の現象なのだろうか。(参考記事:「ホテルのサメが4年連続“処女懐胎”」

 バージェス氏は、ノコギリエイの単為生殖はとくに驚くようなことではないと断りつつ、まだ生態がよくわかっていない種について新たな発見があったのは喜ばしいことだと述べている。

 現在フィールズ氏のチームは、新たに収集したノコギリエイの遺伝子サンプルから単為生殖の証拠を探しつつ、7匹の子どもたちがまだ生息しているかどうかを突き止めようとしている。

「あの子どもたちがさらに子どもをつくれるかどうかを知りたいのです」とフィールズ氏は言う。ノコギリエイが性的に成熟するには約7年かかる。あの子どもたちが生まれたのは2011年だから、フィールズの疑問を解明するには、あと数年は待たなければならないだろう。

文=Jane Lee/訳=北村京子

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