小鳥の超高速タップダンス、健康の指標にも?

ハイスピードカメラが初めてとらえた驚異の求愛ダンスを解析

2015.11.25
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超高速タップダンスの撮影に成功したルリガシラセイキチョウの近縁種であるセイキチョウ。(撮影:太田菜央)
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 こんな求愛ダンス、見たことない! アフリカに生息する小鳥ルリガシラセイキチョウ (学名:Uraeginthus cyanocephalus)が、異性にアピールするためにタップダンスを踊ることが最新の研究で明らかになった。

 青とベージュの色合いが美しいこの鳥は、オスがはねたり、さえずったりして求愛行動を示すことは以前から知られていた。近縁種のセイキチョウとフナシセイキチョウのオスも同様の行動をとる。しかしこのほど、人間がこれまで知らなかった行動がハイスピードカメラによる撮影で明らかになった。ルリガシラセイキチョウは、オスとメスの両方がタップダンスを踊るのだ。(参考記事:「一番派手な極楽鳥の魅惑のダンス」「恋するワニの水中ダンス」

 論文の共著者で北海道大学准教授の相馬雅代氏は、「肉眼では確認できないほど速い動きです」と話す。しかも、小鳥界のフレッド・アステアのような彼らはとても稀有な存在らしい。「私たちが知る限り、こんなタップダンス行動を行う種は他にいません」(参考記事:「「ムーンウォーク」を踊る?森の名演奏家マイコドリ」

【動画】ハイスピードカメラがとらえた、ルリガシラセイキチョウの珍しい求愛行動。鳥類で観察されるのは初めて。(撮影:太田菜央、北海道大学)

目にもとまらぬ足技

 激しく踊りながら歌うなど、人間なら息がきれてしまいそうだが、多くの鳥はパートナーの気を引くため、歌とダンスのショーを同時に演じられる。

 鳥はオスが複数のメスと交尾することが多い。となると、メスがオスを選ぶ目は厳しくならざるをえない。オスは自分の遺伝子を残すチャンスが何度もあるだろうが、メスは1度きりかもしれないからだ。したがって、メスを魅了しようと羽毛などを誇示するのは、普通はオスだ。(参考記事:「ナショジオが紹介した、世界の美しい鳥たち」

 ところがルリガシラセイキチョウは一夫一妻で、それゆえオスもメスも、パートナー選びには非常に厳しい。

 ルリガシラセイキチョウはオスとメスがいずれも巣の材料をくわえ、ジャンプし、さえずって異性にアピールする。オスとメスの両方が求愛行動を見せるのは鳥類の中でもかなり珍しく、相馬氏ら研究者は解明に挑んだ。

 野生の状態で行動を記録するのは難しいため、相馬氏らはドイツ、マックスプランク鳥類学研究所でまとまった数のセイキチョウを飼育している、マンフレッド・ガール氏のラボに協力を仰いだ。

 研究チームは、大きな鳥かごに通常のビデオカメラとハイスピードカメラを設置。ランダムに選んだオスとメスをつがいにして鳥かごに入れ、カメラを回してひたすら待った。互いに求愛行動を全く示さないペアも少なくなかった。

 辛抱の末、ついに求愛行動が観察できた。ノーマルスピードのカメラでは、ジャンプとさえずりという、すでに知られている行動が確認された。一方、ハイスピードカメラは目にも止まらぬ動きをとらえていた。求愛行動のなかでオスとメスの両方が、人間が瞬きするよりも速く、止まり木の上で3回ステップを踏んでいたのだ。研究結果は、11月19日付で科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された。

求愛行動の小道具である巣材をくわえるオスのセイキチョウ。(撮影:太田菜央)
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元気さもアピール

 相馬氏がこの行動を「タップダンス」と呼ぶのは、その華麗な足技ゆえというだけではない。氏は鳥がステップして鳴らす音で、自分の健康状態を相手に知らせていると考えている。(参考記事:「水の上の走り方、水鳥カイツブリの秘技が明らかに」

1  例えば、数分間ダンスし続け、タップ音を出し続けることができれば、健康状態は良好だという合図になるのだ。

 今回の研究にはかかわっていないが、コーネル大学鳥類学研究所の博士課程を修了した研究者、アナスタシア・デイエル氏は「これまでの方向性を変える研究になるでしょう」と話す。「鳥のさえずりばかりが注目されていましたが、ようやく視覚的な求愛行動の研究が始まったのです。この研究は、これまで科学者が検討していなかったことを詳細に調べています」(参考記事:「ニワシドリの求愛」

求愛ダンスを踊るオスのセイキチョウ。(撮影:太田菜央)
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文=Carrie Arnold/訳=高野夏美

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