昔の写真を見せられて「全然変わらないね!」とお世辞を返すことはよくあるが、なかには本当に昔から変わらない人もいる。今回は、フェイスブックを通じて寄せられたこんな疑問について考えてみたい。「最も長い間進化することなく、変わらずに生き延びてきた哺乳類はなんでしょうか」
「昔のまま」の動物たち
「『変わっていない』というのは、定義が難しい言葉です」。そう語るのは、米シカゴ大学の古生物学者で、2014年にナショナル ジオグラフィックの「エクスプローラー」にも選ばれたニザール・イブラヒム氏だ。
科学者たちは化石から古代の動物の骨格を調べることはできるが、それだけで「変わっていない」と言えるわけではない。生理機能やDNAも、時とともに少しずつ変わっていくからだ。
それでもあえて進化による変化が最も少ない哺乳類を挙げるとすれば、それはカモノハシとオポッサムだろうと、米オレゴン大学地質学准教授のサマンサ・ホプキンズ氏は言う。
卵を産み、乳首がない哺乳類
カモノハシは、まさに「生き残り」と呼ぶにふさわしい。彼らは約1億5000万年前に他の哺乳類から分岐した動物の末えいで、「化石にも現生の個体にも共通する、原始的な特徴がいくつもあります」とイブラヒム氏は言う。
たとえば卵を産むことや、乳首がないといった特徴は、カモノハシの祖先が分岐した後の哺乳類には見られない。卵を産む哺乳類は単孔類と呼ばれ、かつては多様な種が存在したが、現在この分類に属するのはカモノハシとハリモグラの2グループのみだ。
ホプキンズ氏によると、カモノハシの祖先とみられる動物の頭骨は、古いものでは白亜紀(1億4500万年前から6600万年前)のものが見つかっているという。こうした化石を特定する際には、アヒルのようなくちばしと独特な形をした顎が手がかりとなる。(参考記事:「巨大なカモノハシの新種、化石を発見」)
イブラヒム氏によると、現生のカモノハシにそっくりな動物の化石は、約250万年前のものが最も古いという。
単孔類ほどではないものの、オポッサムも相当古くから存在する動物で、「ここ数千万年の間、ほとんど変わっていない」とイブラヒム氏は言う。現在、60種以上のオポッサムの仲間が、南北アメリカに生息している。2009年に学術誌『PLOS ONE』に発表された論文は、オポッサムの祖先について、恐竜が絶滅した時代まで遡っている。
好き嫌いはダメ
なぜ彼らがこれほど長い間変わらずにいられたのか、その理由は完全には解明されていないが、安定した環境と競争の少なさによるものではないかとイブラヒム氏は言う。たとえばオーストラリアには、水中で暮らせるよう進化した哺乳類は少ない。つまり水が好きなカモノハシにとっては、競争相手が少なかったわけだ。
見た目が変わらないのは、生き方を変えた結果かもしれない。ホプキンズ氏によると、北米にすむバージニアオポッサムをはじめ、大半のオポッサムの仲間は「食べ物を選り好みしない」という。「虫がいない? じゃあゴミを食べよう。ゴミもない? じゃあ腐りかけの実でいいや」と、何でも食べようとする。順応性が高いため、どんな場所でも生き延びてこられたのだ。(参考記事:「大仰な死の演技をするカエルを発見、ブラジル」)
一方、ジャイアントパンダのように、食事のほとんどが竹という極めて特殊な嗜好の持ち主は、万が一お気に入りの食べものが手に入らなくなった場合、絶滅の危険性が非常に高くなる。
人間もあるいは、なんでも受け入れる心を持つことが、いつまでも変わらずにいるための秘訣なのかもしれない。
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