食欲の秋、芸術の秋、ファッションの秋。秋になるとニューヨークやロンドン、ミラノ、パリで、世界中のデザイナーがコレクションを発表する。そこでは最新のファッションスタイルが披露されるとともに、過去の流行も垣間見える。ファッションは繰り返されるからだ。
服装をとらえた写真を振り返ると、歴史がファッションに影響を及ぼしてきたことがわかる。男女平等が拡大したのは1920年代からだが、この時期の女性のファッションにその流れが反映されている。堅苦しいフォーマルウェアから、着心地や好みを重視したスタイルへと変わってきたのだ。
ここに紹介する写真が示す通り、流行遅れのファッションは、やがてまた時代の最先端になる。例えば、1940年代に特徴的なハイウエストの水着は、半世紀以上のときを経て再び流行しており、英国のキャサリン妃のおかげで、ストッキングの人気も復活している。
何かご用?
パリの骨董品店のオーナーたち。色鮮やかなカーディガンに、おそろいの眼鏡と髪形で決めて、仕事の合間に読書を楽しんでいる。
花とフリンジ
1930年のオートクローム写真。市民で構成されるクラブ「フェライン」の伝統的な衣装を着るハンガリーの少女。
ハイファッション
舞台裏で準備中のファッションモデル。ロシア、サンクトペテルブルクで行われたスタス・ロパートキンのショーより。
色あせないスタイル
ターコイズのジュエリーを身に着けるネイティブアメリカンの男性。米国ニューメキシコ州サンタフェで1926年に撮られたオートクローム写真。このスタイルは1970年代に復活し、今また流行している。
山の男
伝統衣装を着て丸太に腰かけ、パイプを吹かす男性。ポーランドのタトラ山脈で撮影。このオートクローム写真は1930年に撮影されたものだが、素朴な衣装にあるさまざまなディテールは現在のファッションにも通じている。
キャットウォーク
毛皮のローブと帽子を身に着け、ヒョウの毛皮を背景に立つナシ族の男性。チベットと中国の国境付近で撮影。1931年の『ナショナル ジオグラフィック』誌に掲載。毛皮の流行がピークに達したのは1920~1930年代で、ステータスシンボルとしての意味合いが大きかった。
おそろい
フィンランドの首都ヘルシンキ、おそろいのストライプのドレスを着て街を歩く2人の女性。「同調」というデザインコンセプトを体現している。
フレンチ・クオーターのファッション
1930年の『ナショナル ジオグラフィック』誌に掲載。ニューオーリンズのフレンチ・クオーターで劇場の扉の前に立つ女性。このような服装、特にクローシェ帽は1920年代の米国を代表するファッションだ。
夏のスタイル
水を飲む10代の少女たち。1948年にニューヨークで撮影。1940年代に登場したハイウエストの水着はビキニに取って代わられたが、現在、「ビンテージ」風の水着として復活した。

『100年前の写真で見る 世界の民族衣装』(ナショナル ジオグラフィック編、日経ナショナル ジオグラフィック社)
ナショナル ジオグラフィックの貴重なアーカイブから、およそ100年前の世界の人々の服装を紹介。Tシャツとジーンズに駆逐される以前の、リアルな日常服としての民族衣装を212点収録。