テーマパークのイルカ2頭を放流へ、韓国

違法捕獲から5年、ショーから解放

2015.05.22
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ソウル大公園の水槽で生きた魚を食べる練習をするテサン(手前)とポクスン。2頭は6月に済州島沖で放流されることになっている。(PHOTOGRAPH BY JEAN CHUNG, NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像のクリックで拡大表示]

 韓国動物愛護協会は今週、5~6年前に違法に捕獲され、テーマパークのショーに出演していた2頭のミナミハンドウイルカ「テサン」と「ポクスン」が、まもなくリハビリを終えて海に戻されると報告した。これまでにも数頭の捕獲イルカが同じようにして野生に戻されている。

 2頭は現在、外海に戻る準備段階として、韓国済州島沖に作られた囲いの中で暮らしている。テサンとポクスンは先週、ソウル大公園の動物園からここに輸送されてきた。6月末に予定されている放流がうまくいけば、この3年間に7頭の捕獲イルカが解放されたことになる。

「こうした取り組みは、野生から捕獲され、長年にわたり飼育されてきたイルカやクジラでも、リハビリによって野生に帰れることを示しています」と、米国ユタ州にあるキンメラ動物愛護センターのローリ・マリーノ所長は説明する。

「テーマパークの人々は、捕獲されたイルカやクジラは2度と野生に帰ることができないと言って飼育を正当化しようとしますが、解放されたイルカたちは、そうした主張に対する生きた反証になっています。リハビリをしてから放流する、あるいは海の中の囲いの中で余生を送らせるという手法は、近年、支持を集めています。捕獲された海洋哺乳類の権利の保護は、新たな段階に入ったのです」

2度目のチャンス

 テサンとポクスンの2頭は2009年から2010年にかけてほかの数頭のイルカとともに違法に捕獲され、済州島のパシフィックランドというテーマパークに売却された。

 数年にわたる法廷闘争の末、2013年3月に韓国大法院はパシフィックランドに、違法に捕獲されたテサン、ポクスン、サムパリ、チュンサミの4頭のイルカを解放するよう命じた。4頭のうちサムパリとチュンサミは、その後、ソウル大公園のジェドリというイルカとともに済州島沖でリハビリを受け、2013年7月に放流された。

 健康状態が悪かったテサンとポクスンは、すぐには放流できないと判断され、ソウル大公園に送られた。彼らはそこで2年にわたり手厚い世話を受け、今回、先に解放された3頭に続いて群れに帰るチャンスを与えられたのだ。この群れは約120頭からなり、ほとんどの時間を済州島沖で過ごしている。

 2013年の放流の際に相談役をつとめた米国動物福祉研究所の海洋哺乳類研究者ナオミ・ローズ氏は、「放流する場所は、イルカたちが捕獲された場所に近ければ近いほど良いとされています。遺伝的集団もわかっていれば理想的です」と言う。

放流して終わりではない

 テサンとポクスンが海中の囲いから出るためには、健康を回復し、生きた餌を自力でとれるようになったことを証明してみせなければならない。また、野生のイルカと同じように、たえず動いている海水の中にとどまり、何度も潜水できるだけの体力があることも示さなければならない。

 人間が餌をくれるという思い込みをなくし、海の中の世界に興味を持てるように、今後、人間による接触は最小限に控えられる。

 けれどもローズ氏によると、捕獲イルカの状態にはばらつきがあり、衰弱が激しかったテサンとポクスンが野生の群れに合流するのは、ほかのイルカより難しいかもしれないという。「捕獲イルカの解放は、個別に考えなければなりません。1回目が成功したから2回目も成功するはずだ、などと考えてはいけません。うまく適応できていないように見えたら、救出して世話をする柔軟さが欲しいですね」

次に解放されるイルカは?

 現在、世界中で2900頭のイルカが飼育されていて、その多くが野生から捕獲されたと推定されている。こうしたイルカの多くがリハビリと解放の対象となりうるが、捕獲イルカの解放は、今回のテサンとポクスンを最後に、しばらく途絶えるかもしれない。理由は、解放に要する費用の高さだけではない。

「長年人間に飼育されたイルカでも自然に帰すことができるという事実をテーマパーク側が認めようとせず、イルカを手放そうとしないなら、私たちの出番はないのです」とローズ氏は言う。「彼らの考え方が変わらないかぎり、次の捕獲イルカが解放されることはないでしょう」

文=Tim Zimmermann/訳=三枝小夜子

  • このエントリーをはてなブックマークに追加