「これはとても興味をそそられる問題です。新石器時代の人々が500年近くかけて石をストーンヘンジまで引きずっていった可能性もなくはありませんが、あまり現実味がありません。むしろ、石はまずどこか採石場の近くにあるモニュメントで使用され、のちにそれが解体されたときに、ストーンヘンジのあるウィルトシャーへ運ばれたと考えるほうが妥当でしょう」とパーカー・ピアソン氏は言う。

どうやって切り出し、運び出したのか?

 採石場周辺には自然に形成された柱状の岩があり、石切り作業に従事した先史時代の人々はいくらか楽ができただろうと考えられている。「彼らは石柱同士の間に走っているひびに木のくさびを打ち込みさえすれば、あとは雨で木が膨張して、石柱を1本ずつ切り離してくれるのを待てばよかったのです」と、英サウサンプトン大学のジョシュ・ポラード博士は言う。「切り離された石柱は次に、土と石でできた土台まで下ろされます。この『荷の積み降ろし区画』から先は、採石場の外へと続く通路に沿って引きずられていくわけです」(参考記事:「ストーンヘンジの10倍!英国最大の環状遺跡を発掘」

 最終的には、80個のブルーストーンがストーンヘンジまで運ばれた。2トンの石柱を距離にして300キロ近く移動させるのはかなりの大仕事だが、インドでは同程度の大きさの石を、木を格子状に組んだ道具を使って、わずか60人ほどで運んでいたことがわかっている。

ストーンヘンジに使われているブルーストーンが英国ウェールズ産であることは以前からわかっていたが、今回の発見ではより具体的な場所が明らかになった。ウェールズ南西部ペンブルックシャーのプレセリ山地にある2カ所の採石場だ。(Photograph by Adam Stanford)
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 石を採石場から運び出すのは、力と器用さの両方が必要とされる作業だ。出口に続く通路(幅わずか1.8メートル)は狭すぎて、木材を敷いた上に石を載せて転がす方法は使えない。考古学者らは、古代の人々が縄、てこ、支点を利用して石を木製のそりに乗せ、それを山裾まで引っ張るか、滑らせたかしたのだろうと考えている。「この作業には二つのチームが必要です。一方のチームが坂の上で縄を引っ張りながらゆっくりとそりを下ろし、もう一方が1メートルほど下で待機して、それを受け取るのです」とパーカー・ピアソン氏は言う。

 採石場の作業員の食事は肉が中心だったと考えられるが、周辺の土壌は酸性度が高く、骨や角などは一切残っていない。見つかるものといえば焼きグリの残骸くらいだが、これは新石器時代には重要な食料であった。パーカー・ピアソン氏は、少なくとも25人が石切りの作業に従事しており、近くにあった居住地から毎日徒歩で通っていたのだろうと考えている。

 パーカー・ピアソン氏のチームによる調査は、ナショナル ジオグラフィックの科学調査支援プロジェクトとして実施された。

※この記事は2015年12月の記事に最新の情報を追加し、2019年2月に更新したものです。

参考ギャラリー:荘厳で華麗 世界の聖地を彩る38の宗教建築
身が引き締まる荘厳さを放つ寺院から色鮮やかな教会まで、世界中の聖地に建てられた宗教建築38点を紹介。 (PHOTOGRAPH BY JAN MICHAEL HOSAN, FOTOGLORIA/LUZ/REDUX)

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文=Nick Romeo/訳=北村京子