英国の考古学者チームが2019年2月に学術誌『Antiquity』に発表した調査結果により、ストーンヘンジに使われている石の一部がどのように採掘・輸送されたかが明らかになった。
調査チームによると、5000年ほど前にストーンヘンジの建設に使われた特徴的な「ブルーストーン」が、英国ウェールズにある新石器時代の採石場2カ所で切り出されたことを示す数々の証拠が発見されたという。(参考記事:「沈黙の巨石 ストーンヘンジの謎」)
かつてストーンヘンジに立っていたと推定される約80個のブルーストーンのうち、現在残っているのは43個。ブルーストーンはストーンヘンジの内側に馬蹄形に配置され、外側をそれより巨大な砂岩の柱にぐるりと囲まれている。研究者らは採石場から発掘された遺物を精査し、先史時代の人々がブルーストーンを切り出した時期とその方法を特定した。
広大な施設が築かれていた
ブルーストーンの採石場は、ストーンヘンジから陸路で北西におよそ290キロ離れたウェールズのプレセリ山地にある。ブルーストーンの重さは1~2トン、高さは最大で2.4メートルほどだ。(参考記事:「ストーンヘンジの原点 最果ての巨石文明」)
これらの採石場で見つかる火山岩や火成岩の特徴は、ストーンヘンジの内側に馬蹄形に並べられているブルーストーンと、ぴたりと一致する。地質学者によると、採石場一帯はブリテン諸島の中で唯一まだら模様のドレライト(粗粒玄武岩)が見つかる場所で、ストーンヘンジのブルーストーンにも多く用いられているという。
採石場では、石器や土台、木炭、焼けたクリの実の他、採石場からの出口だったらしい道などが見つかっている。「ブルーストーンのおおよその産出地は以前からわかっていましたが、今回の研究で特筆すべきは、実際の採石場が特定できたことです」。プロジェクトの統括者で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン教授のマイク・パーカー・ピアソン氏はそう語る。「ここには土台、傾斜路、荷の積み降ろし区画など、広大な施設が築かれていました。露頭のくぼみには、木製のくさびを打ち込んだ跡も確認できます」
木炭と焼けたクリの実から放射性炭素年代測定を行ったところ、新石器時代に当たる5200~5400年前に、この採石場で人の活動があったことが明らかになった。一方、ストーンヘンジが建てられたのは、5000年前よりは後のことと考えられている。これらを考え合わせると、一つの疑問がわいてくる。切り出された石は400年もの間、いったいどこにあったのだろう。(参考記事:「ストーンヘンジ、地中に未知の17遺跡」)
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