【動画】巨大魚がダイバーを獲物ごと引き回した!

体重100kgのダイバーを軽々と。米フロリダ沖の巨大魚イタヤラ

2015.11.10
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ハタ科のイタヤラは体重360キロ、体長3メートル近くに達する。水中銃で小さな魚を仕留めた100kgの大人を軽々と引っ張った。(Video: Grayson Shepard. Associate Producer: Jed Winer)

 イタヤラ(学名:Epinephelus itajara、英名:ゴリアテ・グルーパー)と同じ魚を追いかけたら、激しい奪い合いになるかもしれない。米フロリダ州アパラチコーラ沖に潜っていたグレイソン・シェパードさんは、それを身をもって学んだ。(参考記事:「フロリダ沖のでっかい魚イタヤラ」

 2015年6月、沈没船の横たわる海域で、水中銃を使ってフエダイを捕っていたシェパードさん。その獲物を横取りしようと、数匹のイタヤラが向かってきた。この驚くべき映像は、そのとき彼が撮っていたものだ。

 しばらくの格闘の後、1匹のイタヤラがシェパードさんの銛を曲げてしまった。シェパードさんはナショナル ジオグラフィックに対し、「あまりにひどくひん曲げられて、水中銃として使えなくなってしまいました」とメールで語った。途中、数匹のイタヤラがシェパードさんの獲物を同時に追いかけ、一時的にシェパードさんを乱暴に引きずり回す場面もあった。(参考記事:「巨大魚イタヤラ、サメをひと飲みに」

「イタヤラは体重100キロの私を6メートルかそこら軽々と引き回し、ようやく放してくれました」とシェパードさんは振り返る。

 旧約聖書に登場する巨人「ゴリアテ」の名がつく通り、イタヤラは間違いなく水中の巨漢だ。体長3メートル近く、体重は最大で360キロにも達する。(参考記事:「巨大魚ウバザメが網に、まるで古代生物」

 大西洋西部とメキシコ湾の浅い岩礁や沿岸に生息するイタヤラは、かつて大量に捕獲され、1990年以降、米国内での漁は禁じられている。

待ち伏せタイプのハンター

 この映像では、まるでイタヤラが狩人のようにシェパードさんの跡をつけ、魚をひったくる最高のタイミングを待っていたかのように見える。

「イタヤラがダイバーの跡をつけていたかって? 聞くまでもありません。ダイバーを乗せた船が近づくのも音で分かっていたはずです」と話すのは、フロリダに拠点を置く企業「エスチュアリン・コースタル・アンド・オーシャン・サイエンス」の魚類生態学者、R・グラント・ギルモア氏だ。

 数十年にわたってイタヤラを研究しているギルモア氏によれば、イタヤラは「主に動きの遅い動物を待ち伏せして襲います。今回の場合は、水中銃を打ち込まれたフエダイが『動きの遅い動物』だったのです」という。

 ギルモア氏はさらに、イタヤラの寿命は最長50年にもなり、人間の行動を学習・記憶できるほど賢いと付け加えた。「もしダイバーがイタヤラを水中銃で撃とうとすれば、イタヤラはすぐに学習します。とても知能が高いのです」(参考記事:「謎多きシーラカンス、寿命は百年以上?」

 ナショナル ジオグラフィック協会付き探検家のシルビア・アール氏は、この出来事をイタヤラの立場から考えてみてはと提案する。(参考記事:「ワールド・イズ・ブルー 母なる海に迫る危機」

巨大なイタヤラの間近で撮影

 アール氏はメールで、「海の世界にとって、イタヤラではなくダイバーこそ泥棒に当たることは明らかです」と語った。

「ともあれ、すぐ近くで魚が傷ついたらイタヤラはどうするでしょうか? 迷わず『お食事タイム』です!」

いまは保護の対象だが…

 フロリダ沖ではイタヤラの個体数が緩やかに回復している。しかしギルモア氏によれば、保護されている一方でイタヤラの密漁は横行しており、この巨大魚の漁が再び解禁される懸念もあるという。

「イタヤラは、サンゴ礁の頂点捕食者として、生態系の中で役割を果たしています」とギルモア氏は指摘する。「頂点捕食者を取り除いたら、バランスが崩れてしまいます」

 加えてギルモア氏は、イタヤラは侵略的外来種であるミノカサゴ対策の決め手になるかもしれないと話す。ミノカサゴは大西洋で大量に繁殖し、在来種の魚を脅かしている。だが偶然にも、これがイタヤラの好物なのだ。(参考記事:「ホンジュラス、サメで外来魚駆除」

 水中銃を持って潜っていたシェパードさんは、力自慢の魚に大いに敬意を抱いていると話した。

「獲物を奪われてしまったのは腹立たしいですが、イタヤラを保護する法律は尊重しますし、イタヤラを物理的に傷つけたり殺したりは決していたしません」

「頂点捕食者のイタヤラは生態系で決まった役割を果たしていて、その生態系にとって私はよそ者にすぎません。私もイタヤラも同じ獲物を狙っていますが、それはもともと彼らの物。彼らが私に戦いを仕掛ける権利は当然あるわけです」

文=Stefan Sirucek/訳=高野夏美

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