世界各地に伝わる民族衣装はさまざまな役割を担っている。祖先を祭るため、宗教儀式を行うため、重要な出来事を記念するためなど。ほぼすべての文化には、他とは違う特別な意味を持つ衣装というのが存在する(ウェディングドレスや、米国の友愛団体シュライナーが頭に着けるフェズという帽子など)。
1913年から現在に至るまで、ナショナル ジオグラフィック協会の秘蔵写真を集めてみたら、儀式的・文化的衣装の豊かな個性と歴史が見えてきた。
タイの文化を代表して
タイのドンムアン空港を訪れたパイロットを出迎える少女たち。1921年、ナショジオ誌に掲載された記事「飛行機にてロンドンよりオーストラリアへ:世界を半周した初飛行についての私的談話」より。
今ならありえないコメント
ナショジオが創刊されたばかりの頃は、性差別ともとれる表現が記事に書かれることもあった。1913年に掲載された写真には「ジョージア(グルジア)の女性たち。民族衣装で着飾るも、さほど魅力的とはいえない」という説明が添えられていた。
ドレスアップしておすまし
1930年ごろ、ハンガリーのメゼーケベジュドで、華やかな衣装に身を包む少女。写真は、オートクロームと呼ばれる最初期のカラー写真技法で撮影されたもの。材料には、ちょっと意外なじゃがいものでんぷんが使用されている。(参考記事:「豪華な花の冠 ポーランドの花嫁衣裳(1930年)」)
ジョーカー
フランス、コンピエーニュのジャンヌ・ダルク祭で、中世宮廷の道化師に扮する人々。1932年のナショジオ誌に掲載された。
演技
1934年に、中国の沿岸都市を取材した時の写真。古代の登場人物の衣装を身に着けた役者たち。(参考記事:「中国・少数民族のプリンス(1931年)」)
踊り明かす
パナマの国民舞踊タンボリートを踊る男女。1941年のナショジオ誌に掲載された。この求愛のダンスは、写真の2人のような衣装を着てお祭りなどでよく披露される。
草原の輝き
1930年代、アルバニアの伝統的な服を着てオートクローム写真に収まる男性たち。アルバニア王国の首都ティラナにて。
ピエロ
1970年代初頭、米ワイオミング州のロデオ会場で2人のカウボーイの間に座るピエロ。米国では、あばれ牛に乗るロデオ競技の合間にピエロが登場して観客の緊張を解きほぐす。
公共劇場
1990年代初頭の台湾、二龍村の広場で公演する福星劇団。
コスチュームの4人組
1990年初頭のイタリア、古風な衣装を着てベネチア・カーニバルへ出かける人々。毎年四旬節の前に開かれるこの祭典は、華やかな衣装と仮面、そしてパレードが有名。(参考記事:「ブルターニュの伝統 優美なるレース」)
出番を待つ踊り子
伝統的なクメール舞踊の踊り子たち。これから観光客の前で踊りを披露する。2000年のナショジオ記事では、長期にわたったクメール・ルージュによる暴政の後、かつての文化を再興させようと活動するカンボジアの人々を取材した。
ようこそ、ようこそ
派手なかつらを着けることからウィッグマン(かつら男)とも呼ばれるパプアニューギニアのフリ族。歓迎の踊り「シンシン」が始まる前に、人間の頭髪で作られたかつらを自慢げに見せてくれた。1990年代撮影。精巧な衣装は、この土地に生息する鳥をモチーフにしたもの。(参考記事:「ナショジオが撮った、世界各地の晴れの装い」)
復活祭の踊り
メキシコのチョグイタ村で、復活祭の前に行われる儀式のためパリサイ人に扮するタラフマラ族。儀式は、最後にユダをかたどった人形を火で焼いて終了する。2008年のナショジオ誌に掲載。
路上で踊る人々
ブラジル、サルバドール・カーニバルのパレードで思い思いに踊る人々。2000年代初頭。四旬節の前に開かれる。
ワイルドマン
元日のルーマニア。狩りの様子を再現する儀式で、雄鹿に扮した男性。2013年の記事「欧州のワイルドなやつら」には、他にも精巧な衣装を身に着けて古い伝統文化を祝う男たちの写真が紹介されている。