【動画】中国に「天空都市」出現、映像は本物?

蜃気楼か作り物か、大気の専門家に聞いた

2015.10.23
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中国上空に現れた「空中都市」

 中国広東市で雲の上に謎の空中都市が出現したとする動画が公開され、ネットを騒がせている。NASAの極秘プロジェクトか、よくできた作り物か、いや、本物の気象現象だなどと、様々な憶測が飛び交っている。

 専門家の意見は慎重だ。「映像はちょっとできすぎのような気もします」と語るのは、米国立大気研究センターの大気科学者ペギー・レモーン氏。米ボール州立大学の大気科学者ジル・コールマン氏は「もし本物だとすれば、上位蜃気楼と呼ばれる現象だと考えられます。蜃気楼が物体の上に現れる現象です」と説明する。上位蜃気楼は「ファタ・モルガーナ」とも呼ばれている。(参考記事:「氷晶が生み出す、光のダイヤモンド」

 コールマン氏によると、地上近くに密度の高い冷たい空気の層があり、その上に暖かい空気の層ができると、上位蜃気楼が現れる。大気中で通常起きているのと逆の現象であるため、これを気温の逆転と呼ぶ。水面のすぐ上の空気は比較的冷たいので、広い範囲に水のある海や湖で起こることが多いが、陸上で発生することもある。

 空気の層がこの状態になると、ひとつの層から次の層へ光が通る際に屈折を起こし、人間には実際よりも高い位置に物が見える。人が立つ位置によって上位蜃気楼の見え方は変わってくるため、物体から離れているほど高い位置に見えるという。

 この動画もそれと同じで、「町が天空に浮いているように見えたのでは」と、コールマン氏は言う。町の中心にいた人々からはかなり違って見えたと考えられる。

 時に船が空を飛んでいるように見えたり、巨大な「水の壁」が水平線の向こうに現れて見えたりするのも、上位蜃気楼のためだ。空飛ぶ幽霊船フライング・ダッチマン号の伝説も、ひょっとするとここから生まれたのかもしれない。タイタニック号の沈没に上位蜃気楼が関係していたのではと考える人もいる。(参考記事:「大気によって月が歪む現象“グリーンフラッシュ”」

 中国の江西と仏山で動画が撮影されたとされる当時の大気の状態をコールマン氏が調べたところ、「同じ時間帯に確かに気温の逆転が起こっていた」という。また、該当する町には、上空に現れた建物と似たような建物が存在する。コールマン氏は、これらを考えると動画は本物の可能性があるとしている。

 レモーン氏自身はファタ・モルガーナを自分の目で見たことはないが、逆の現象、つまり空が地上に反射した状態(下位蜃気楼)は何度も見ているという。光が逆方向に屈折し、物の位置が実際よりも下に見える現象だ。「よく観察してみると、大気中ではいろいろな面白い現象が起こっているんです」と、レモーン氏は話す。(参考記事:「めずらしい大気現象ファイヤー・レインボー」

文=Jane J. Lee/訳=ルーバー荒井ハンナ

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