土星の衛星エンケラドス、氷の下に全球を覆う海

7年分の画像から、衛星がふらつく原因を推定

2015.09.18
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土星の衛星エンケラドスの直径は500km。氷の外殻の下には全球を覆う海があり、南極の「タイガーストライプ(虎縞)」と呼ばれる地形(擬似カラー画像左側)から海水が噴出しているのが確認されている。こうした海は、地球外生命体探査の重要な候補となる。(PHOTOGRAPH BY CASSINI IMAGING TEAM, SSI, JPL, ESA, NASA)
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 海水を噴出していることで知られる土星の衛星エンケラドスが、氷の外殻の下に全球を覆う海を隠し持っていることが明らかになった。地球外生命探査の候補を探す研究者にとっては朗報だ。

 科学者たちは、NASAの土星探査機カッシーニが撮影したエンケラドスの画像7年分以上を人力で分析することにより、エンケラドスが土星のまわりを公転しながらわずかにふらついていることを発見した。このふらつきは非常に小さいが、表面から核まで完全に固体であるような衛星のふらつきとしては大きすぎる。研究チームが9月11日に科学誌『イカルス(Icarus)』に発表した論文によると、ふらつきを最もうまく説明できるのは、全球を覆う液体に外殻が浮いていると考える場合だという。(参考記事:「土星の衛星エンケラドスに生命の新たな可能性」

 米SETI研究所のマシュー・ティスカレノ氏は、「表面と核が強固につながっていたら、核がおもりになるので、ふらつきは観測よりずっと小さくなるはずです」と説明する。「表面と核の間に全球を覆う液体の層があると考える必要があるのです」

 米ワシントン大学のビル・マッキノン氏は、この研究はしっかりした手法で行われていると評価する。彼によると、今回の発見はカッシーニが収集した重力データにもとづく過去の研究と矛盾しないし、エンケラドスの特徴のいくつかを説明するには全球を覆う海を考えるのが最も容易であるという。

エンケラドスの海
土星探査機カッシーニが撮影した画像7年分以上を分析した結果、エンケラドスの氷の外殻と岩石からなる核の間に、全球を覆う液体の海があることが分かった。(NG STAFF SOURCE: NASA)
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地球外生命体探査との関係

 エンケラドスには間欠泉があり、宇宙空間に向かって塩水と有機分子を噴き出している(これを「プルーム」と言う)。2005年にカッシーニが初めてこのプルームを発見して以来、エンケラドスは宇宙生物学者が行ってみたい場所ランキングの上位にある。(参考記事:「私を氷衛星地球外生命探査に連れてって エンケラドスvsエウロパvsケレス」

 NASAジェット推進研究所の宇宙生物学者ケビン・ハンド氏は、「私たちが探しているのは、化学物質を豊富に含み、長い年月にわたって存在していると考えられる、液体の水からなる海です」と言う。

 ところがエンケラドスについては、プルームこそ確認されたものの、それが長い年月にわたって存在している海に由来している証拠はほとんど得られていなかった。初期の理論では、おそらく衝突によって形成された、局所的な小さい海があると考えられていたが、そのような海は新しすぎて、生命が誕生しているとは考えにくい。

 けれども今回の発見のように、エンケラドスの海が全球を覆っているなら、長期にわたって安定に存在することができるため、微生物が誕生している可能性が出てくる。「全球を覆うほどの海を一時的な現象として説明するのは困難です。生命が誕生している可能性にとって、プラスの材料になります」とハンド氏は言う。(参考記事:2014年7月号「生命は地球の外にも存在するのか」

謎の多い天体

 今回のエンケラドスのほかにも、氷の外殻の下に海の層がある天体はいくつか知られている。例えば、木星の衛星であるエウロパやガニメデは、木星や他の巨大衛星の重力の影響で発生する熱により、内部海が液体の状態を保っていられることが分かっている。

 一方、土星のエンケラドスについては未知の部分が多い。海の深さも、海が液体でいられるための熱の発生要因も、南極の氷の外殻だけが間欠泉が噴出するほど薄くなっている理由も分かっていない。

 ハンド氏は、「南半球の海底だけが活動しているということでしょうか?」と問いかける。「エンケラドスの海とその下の惑星物理学的活動をめぐる秘密は、氷の外殻によって覆い隠されているのです」

 カッシーニ探査機は2017年まで土星系の探査を続け、最後に土星に突入する予定になっているので、今後も新たな情報をもたらしてくれるはずだ。カッシーニが次にエンケラドスに近づくのは今年の10月で、最後のフライバイ(接近通過飛行)は12月に行われる。 

 地球から打ち上げられた探査機が宇宙を旅して小さな氷の天体に接近するたびに、私たちは、こうした天体の成り立ちを理解できていないことを痛感させられる。今年に入ってからも、NASAの探査機ドーンが、小惑星帯の準惑星ケレスに到達して、その脆くてクレーターだらけの素顔を明らかにした。同じくNASAの探査機ニューホライズンズが、太陽系の端にある冥王星の近くを猛スピードで通過しながら、この興味深い準惑星の観測を行ったことも記憶に新しい。これからの数十年間、数多くの探査機が太陽系のさまざまな天体を探査して、その秘密を明らかにし、旅先から別世界の絵葉書を送ってくれることだろう。(参考記事:2015年7月号「はじめての冥王星」

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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