歴史を変えた、心揺さぶる子どもたちの写真

水死したシリア難民男児の最期の光景は、世界をどこまで動かせるのだろう

2015.09.08
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水死した男の子が残したもの

 トルコの通信社ドーガンの記者、ニルファー・デミール氏が撮影したシリア人男児の写真も、同様のインパクトを与えるかもしれない。

 ベビーカーを押すハイチの少年を撮影したファレル氏は、今回の写真も、ここ10年の難民の危機的状況への対策を促す可能性は十分あると考えている。「この種の悲惨な報道は米国では珍しくなく、人々にとっては、一時的に耳に入ってもすぐに遠ざかる雑音同然になっています。そんな中でも、大音量が聞こえれば目を向けずにはいられません。この写真はそうした1枚です」

 ハイチの少年の運命は分からないままだ。「アフガンの少女」のその後も、何年も分からなかった。だが私たちは、シリア人男児の物語を大まかながら知っている。アイラン・クルディちゃんは亡くなり、5歳の兄と母も命を落とした。助かったのは父親だけだった。一家は2000ドルを払って紛争が続くシリアから逃れ、安全な地で暮らそうとしていた。

 残酷なようだが、水死した男児の写真がこれほど胸に迫るのは、写っている犠牲者が彼1人だからだ。ボートの転覆でほかに11人が亡くなったが、ここには写っていない。

「ピクチャーズ・オブ・ザ・イヤー・インターナショナル」のリック・ショー氏はこう語る。「仮にもっと多くの子どもたちが写っていたら、見る者に与える動揺と恐怖感が強すぎます。たった1人だからこそ、ひと目で意味が分かります。今後何年も、脳裏に焼き付くであろう写真です」

『ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版』(ハル・ビュエル著 日経ナショナル ジオグラフィック社)

ピュリツァー賞設立の1942年から最新の2015年までの受賞作を収録。写真のみならず、背景や写真が果たした役割なども詳述。解説の資料性も高い必携の書。
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文=Susan Ager/訳=高野夏美

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