カバの「血の汗」は日焼け止めだった

魚やカバは紫外線から体を保護する化学物質をつくりだせる

2015.08.19
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カバの皮膚には紫外線から体を保護する色素が含まれている。写真はオーストラリアの動物園で撮影 。
(PHOTOGRAPH BY JASON EDWARDS / NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 先日、日焼け止めクリームを塗らずに海で遊んでしまったところ、ひどい日焼けをしてクリームを塗ればよかったと、ひどく後悔した。私たち人間とは違い、魚やカバなどの野生動物は強い日差しから体を保護するために、薬局が必要になることはない。どうしてだろう?

日焼け止め遺伝子

 「eLife」誌に発表された最新研究によれば、魚、鳥、両生類、爬虫類の一部には「ガズソール」という化合物を生成する遺伝子があることがわかった。このガズソールが日焼け止めの役割を果たす。

 この研究を率いたタイフォ・マフムード氏は米オレゴン州立大学で医薬品化学の教授を務める。同氏に、メールでガズソールについて訊いたところ、「ガズソールは紫外線(UV)、なかでも日焼けの原因となる紫外線B波(UVB)を吸収して、熱の形で放散します」ということだった。

 とくに、ゼブラフィッシュが生成するガズソールは、人が使う日焼け止めの改良に役立つ可能性があり注目されている。ゼブラフィッシュの遺伝子を組み込んだ酵母で、実際にガズソールの日焼け止め効果を確かめるテストも実施され、実用性が証明された。(参考記事:2007年4月号の壁紙「団地住まいの魚たち」

「血の汗」の正体

 独自の方法で紫外線を防ぐ動物はほかにもいる。2004年に「Nature」で発表された研究論文によれば、カバの汗には赤とオレンジの色素が含まれている。赤の色素は抗菌作用、オレンジの色素は紫外線を吸収するという。この2つの色素が細菌の感染と日焼けから、アフリカのカバを守っているのだ。今なお「カバは”血の汗”をかく」という誤解があるが、それもこれで説明できる。

 2014年には、「Current Biology」誌に、シャコの目には“天然の日焼け止め”として知られるアミノ酸の色素「MAA」が含まれている、という論文が発表されている。ただし、この色素は別の役割も果たす。シャコが驚くほど目が良く、複雑な視覚を持つのは、MAA が強力なフィルターとしてはたらくおかげだ。(参考記事:「光を操り、姿を隠すシャコの子ども」

 マフムード氏の研究に参加したロバート・タンギー氏(オレゴン州立大学の教授、専門は分子毒性学)は、ゼブラフィッシュのガズソールも日焼け止めの効果だけでなく、「胚発生の助け」など複数のはたらきがあると話す。

 アフリカハイギョの一種(Protopterus annectens)は紫外線を防ぐことはできないが、涼しさを保つすべは知っている。乾季になると、このハイギョは川底に穴を掘って潜り、自らの粘液で繭のようなものをつくって、この繭に包まれた状態で乾季を土中で過ごす。これが「夏眠」といわれるもので、字面通り夏の冬眠だ。(参考記事:「“歩く魚”を発見、歩行の起源は水中?」

文=Liz Langley/訳=米井香織

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