「今世紀末に海面3m上昇」と研究報告

沿岸都市が水没? ほかの専門家は懐疑的

2015.07.24
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フィリピン・マニラ北部。人口が増えて町は拡大したが、頻繁に洪水に見舞われている。(PHOTOGRAPH BY GEIRGE STEINMETZ, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 今世紀末までに海面が3メートル上昇するとする論文を、元NASA所属で現在米コロンビア大学の気候科学者ジェームス・ハンセン氏を筆頭著者とする16人の研究チームが、査読付き学術誌「Atmospheric Physics and Chemistry」に発表することがわかった。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今世紀末までに起こる海面上昇は最高で0.9メートルと予測している。今回の予測は、このIPCCのシナリオを大幅に上回る深刻な予測だ。

 ハンセン氏らは論文の中で、この先グリーンランドと南極の氷床融解が進むと、海流の動きの停滞が引き起こされると予測している。その結果、南極海の下に暖かい海水が閉じ込められて、その海域の海氷融解をさらに加速させるという(もし南極大陸の氷が全て解けると、海面は約60メートル上昇するといわれている)。(参考記事:2013年10月号「氷河融解」

 ハンセン氏の予測通りに海面が3メートル上昇すれば、ニューヨークから上海まで、世界中で多くの沿岸都市が居住不可能となる。

ほかの研究者は懐疑的

 一方、ほかの気候科学者の多くは、ハンセン氏の結論に懐疑的だ。

 米ワシントン大学の地球科学教授イエン・ジョウギン氏は、氷河と氷床の融解による海面上昇は、年間で1ミリ程度に留まると考えている。ハンセン氏のチームは、今後グリーンランドの氷の融解速度が2倍になると予測しているが、ジョウギン氏は過去の傾向と、現在分かっている事実に照らし合わせてみても、その可能性はほとんどないとしている。「現在の融解速度から3メートルに達することはまずないでしょう」と、ジョウギン氏は言う。(参考記事:「加速する海面上昇」

 NASAゴダード宇宙研究所の気候科学者ギャビン・シュミット氏は、ハンセン氏の報告が「1つのシナリオに過ぎず、そのシナリオを証拠立てるものではありません」としている。論文は「議論を広げることにはなるでしょう」と言いつつも、従来の見解とはかけ離れているため、気候変動に関する主流派の主張や、二酸化炭素排出量削減へ向けた国際的な協議、各国政府へ対するIPCCの提言へ影響を与えることはないとしている。(参考記事:「フロリダ発 海面上昇とマネー」

 ハンセン氏には今回、話を聞くことはできなかった。

【参考動画】消えゆく南極の氷河(2008年)

南極半島の氷河は驚くべき早さで解けている。その深刻な事態に迫る。

文=Brian Clark Howard/訳=ルーバー荒井ハンナ

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