チュリュモフ彗星の謎の穴、正体を究明

穴だらけの彗星は若かった

2015.07.02
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研究者たちは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面にある穴がどのようにできたかを探っている。(PHOTOGRAPH BY ESA/ROSETTA/MPS FOR OSIRIS TEAM MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA)
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 欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機ロゼッタは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面に、側面が切り立った不思議な穴を多数発見した。その1つは直径220m、深さ185mもある。この穴は、彗星の内部がもろいためにできた陥没穴と考えられること、彗星の年齢や形成過程を解き明かす手がかりになることが、ドイツのマックス・プランク太陽系研究所などの研究で明らかになった。最新の『ネイチャー』誌に掲載された。

 昨年の夏、ロゼッタが史上初めて彗星の周回軌道にのったとき、科学者たちはすぐに奇妙な穴の存在に気づいたが、彗星のごつごつした表面の地図づくりに手一杯で、穴について深く考えることはしなかった。今回の論文の筆頭著者である惑星科学者ジャン-バティスト・ヴァンサン氏は、「最初は何の穴なのか全然わかりませんでした」と言う。研究チームは論文のなかで、この穴の起源に関するいくつかの仮説について検証している。

隕石の衝突はありえない

 ヴァンサン氏によると、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面の穴が隕石の衝突によるクレーターである可能性は低いという。衝突してできた穴の側面は、こんなに切り立っていないからだ。

 彗星の地下にある氷が太陽光に温められ、外に向かって爆発したときにできた穴でもないようだ。ロゼッタは昨年、彗星の表面でそうした爆発を確認しているが、こんなに巨大な穴を作れるような規模ではなかった。

 もう1つの説明は、彗星表面の氷が徐々に宇宙空間に逃げてゆき、岩石だけが残ったとするものだが、これも考えにくいとヴァンサン氏は言う。「一部の穴の内側から塵やガスのジェットが噴出していたので塵の量を測定してみましたが、ごくわずかでした。この方法だと、穴は永遠に完成しないでしょう」

 研究チームは最終的に、穴は下から形成されたという結論に落ち着いた。なんらかの原因により地下に空洞ができ、そこに表面が崩れ落ちて、穴ができたのだ。

 彗星そのものの密度は、岩よりも非常に低く、氷より低いほどである。そのため彗星の専門家たちは、昔から彗星の内部には空洞があるはずと考えていた。

 内部に大きい空洞がある彗星は、太陽系の歴史の初期に大きな岩塊が合体して形成されたと考えられる。これに対して、内部に小さな空洞が無数にある彗星は、もとから小さい破片どうしが合体して形成されたのだろう。

穴だらけの彗星は若い

 表面の穴は、彗星の年齢に関する手がかりも与えてくれる。岩石と氷からなる彗星が太陽の近くを通過すると、氷が逃げ出して内部構造がもろくなる。そうして残った岩石が崩れ、表面が落ち込んだ結果、陥没穴ができるのだ。ただし時間がたつと、陥没穴の側面からさらに氷が失われてもろくなり、そこが浸食されて滑らかになるため、最終的に穴は消滅するとヴァンサン氏は予想している。

「小惑星に似ていますが、変化の方向は逆です」とヴァンサン氏は言う。ほぼ岩石からなる小惑星に円形の穴が多数あいている場合は、たくさんの隕石が衝突したと考えられるので、小惑星は非常に古いことになる。

 一方、「彗星の場合は、穴が多いほど若いのです」と彼は言う。この推測は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の歴史とよく一致している。科学者たちは、この彗星は形成されてからほとんどの時間を太陽系の外縁部で凍りついた状態で過ごし、ほんの70年前から太陽に接近するようになったと考えている。

着陸機の復活

 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、岩塊と氷がゆるく結合したものなのだろうか? それとも、もっと粒の小さい氷と小石が混ざったものなのだろうか? その答えは現時点では不明だが、数カ月のうちに明らかになるだろう。

 ロゼッタ探査機の着陸機フィラエは、昨年の秋に彗星への着陸に成功した直後に休眠状態になっていたが、この6月に目覚めた。フィラエとロゼッタが協同して調査を行うことで、彗星の内部構造をこれまでになく詳細に解明することができるだろう。(参考記事:「フィラエ、彗星に到着」

 ロゼッタがもたらす発見は、それだけでは終わらないはずだ。ロゼッタは当初、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した後、2015年8月13日の太陽への最接近を経て、12月末でミッションを終了する予定になっていた。けれどもESAは、ミッションを2016年9月まで延長することを決めている。科学者たちは今回のミッションでどれだけ多くの知識を得られるだろうか。(参考記事:「間もなく最接近、はじめての冥王星」

文=Michael D. Lemonick/訳=三枝小夜子

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