画像では青い染みのようにしか見えないが、EGS-zs8-1銀河は地球から約131億光年の彼方にあり、ビッグバンから7億年以内に形成された。この銀河までの距離を厳密に測定できたことは、天文学者にとっては技術的快挙である。(PHOTOGRAPH BY PASCAL OESCH AND IVELINA MOMCHEVA, NASA, EUROPEAN SPACE AGENCY VIA AP)
画像では青い染みのようにしか見えないが、EGS-zs8-1銀河は地球から約131億光年の彼方にあり、ビッグバンから7億年以内に形成された。この銀河までの距離を厳密に測定できたことは、天文学者にとっては技術的快挙である。(PHOTOGRAPH BY PASCAL OESCH AND IVELINA MOMCHEVA, NASA, EUROPEAN SPACE AGENCY VIA AP)
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 宇宙で最も遠い銀河が新たに見つかった。

 このほど米国ハワイのケックI望遠鏡が、131億年前にこの銀河EGS-zs8-1を出て、はるばる地球まで旅してきた光をとらえたのである。

 この記録も遅かれ早かれ覆される運命かもしれないが、現時点でEGS-zs8-1がこれまでに発見された最遠の銀河であることは確かだ。今回とらえられた光は、ビッグバンから7億年も経たない時代に、誕生から約1億年しか経っていないEGS-zs8-1銀河の星から発せられた。ちなみに、私たちの銀河系は誕生から132億年経過している。今回の論文を『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』誌に発表した米エール大学のパスカル・オシュ氏は、「これほど古い時代まで遡ることができたのは驚異的」と語る。

「暗黒時代」に一歩近づく

 オシュ氏らが興味を持っているのは、抜きつ抜かれつの競争で一時的な勝利をおさめることではない。「私たちを取り巻く世界を構成するすべての元素は、初期宇宙の銀河の中で作り出されたと考えられているからです」と彼は言う。今回の発見は、ビッグバン後の宇宙の「暗黒時代」から最初の星々が形成された過程を解き明かすのに役立つだろう。

 米カリフォルニア工科大学の天体物理学者リチャード・エリス氏は今回の研究には関与していないが、「彼らの研究には強い説得力があり、これによりまた一歩、暗黒時代に近づくことができました」と言う。

 実はエリス氏は、ビッグバンからわずか3億8000万年後の形成とみられる銀河を含め、EGS-zs8-1より古い可能性のある銀河を発見している。ただしこの数字は、銀河の色の大雑把な測定から、経験にもとづいて推測したものにすぎない。銀河の色は、地球からの距離(つまり古さ)を知るための重要な手がかりとなる。膨張する宇宙の中では遠方の銀河ほど高速で遠ざかっていくが、光のドップラー効果(赤方偏移)により、高速で遠ざかる銀河ほど赤みがかって見えるからだ。

 オシュ氏らも、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡の両方を使って、この方法でEGS-zs8-1が遠方の銀河であることに気づいた。けれども彼らは、さらにケックI望遠鏡を使って、距離を厳密に測定したのだ。巨大なケックI望遠鏡の集光力は、どの宇宙望遠鏡と比較しても格段に高い。天文学者たちは4時間の露光によりEGS-zs8-1のスペクトルを撮り、高い精度で距離を測定することができた。(参考記事:「望遠鏡新時代」

 「このときのEGS-zs8-1は、今日の銀河系の80倍の速さで星々を生み出していました」とオシュ氏。EGS-zs8-1が異常に明るくなかったら、ケックI望遠鏡と強力な近赤外多天体撮像分光器MOSFIREをもってしても、その距離を測定することはできなかっただろう。

目指すは「古くてふつう」の銀河

 天文学者たちは、EGS-zs8-1と同じ時代かさらに古い時代の、もっと暗く、もっとふつうの銀河を調べたいと思っている。オシュ氏には、これから調べてみたい銀河が数百個あるが、そうした銀河の光は非常に弱いことが問題と言う。論文の共同執筆者であるリック天文台のガース・イリングワース氏も、「これから先の道のりは困難を極めるでしょう」と予想している。

 実際、光の弱い銀河を調べるのは非常に難しいので、数年後に打ち上げられるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や、2020年代初頭に稼働する予定になっている新しい大型地上望遠鏡の完成を待たなければならないかもしれない。(参考記事:「ここがすごい!ジェームズ・ウェッブ望遠鏡」

 それでも、「EGS-zs8-1を観測できたのは嬉しいことです。遠方の銀河を見つけるたびに、古い時代の宇宙が見えてくる。本当に面白いと思います」とイリングワース氏は言う。

文=Michael D. Lemonick/訳=三枝小夜子