アマゾンでダムの建設ラッシュ、今後も数百カ所に

水力発電用ダムが川や森林を脅かし、先住民の立ち退きも多発

2015.04.28
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ブラジルはアマゾンの水力を利用した水力発電ダムの建設ラッシュの先鋒となっている。2012年にマデイラ川に建設されたジラウ・ダムもそのひとつだ。(PHOTOGRAPH BY NOAH FRIEDMAN-RUDOVSKY, THE NEW YORK TIMES/REDUX)
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 先住民アシャニンカの指導者であるルス・ブエンディア氏は、アマゾンのエネ川に建設が計画されていた水力発電ダムによって多くの先住民が立ち退きを迫られると知らされたとき、建設に断固反対する決意をした。ただでさえ、政情不安により住民たちの生活は混乱しているというのに、その上立ち退きを要求されれば、ブエンディア氏の家族を含め多くの人々がさらなる困難を強いられることになる。

 川沿いにあるペルーの地域社会の指導者の間では、建設計画の是非をめぐって意見が対立していた。賃金のよい工事の仕事が増えることを歓迎する人々もいたが、ブエンディア氏は意見を曲げなかった。

 結局建設計画は保留となったが、アマゾン川流域にはすでに150のダムがあり、今も論争中の計画も多い。それ以外にも、何百という工事が計画されている。

 科学者らは、アマゾンの貴重な生物多様性がダムの存在によって損なわれることを懸念している。ダム建設により魚の産卵場へのルートが阻まれ、植物の成長に欠かせない栄養を豊富に含んだ土が減り、森林は伐採される。ダム湖ができる場所に住む先住民たちは立ち退きを迫られる。アシャニンカ族もそのひとつだ。彼らの生活は、川に大きく依存している。

VIRGINIA W. MASON, NG STAFF SOURCES: INTERNATIONAL RIVERS; FUNDACIÓN PROTEGER; ECOA; RED AMAZÓNICA DE INFORMACIÓN SOCIOAMBIENTAL GEORREFERENCIADA
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 アマゾン川のダム建設ラッシュを助長しているのは、10年以上続いている周辺諸国の安定的な経済成長に伴って、かつてないほど高まっているエネルギー需要だ。米国本土の面積に匹敵する広大な土地に広がる巨大な水系のおかげで、水力発電はアマゾンで最大のエネルギー源であり、コストも他の発電法に比べて安い。

 しかし、これらのダム計画には必要な水が安定して供給されない可能性もある。リオデジャネイロとサンパウロの厳しい干ばつを見れば明らかなように、気候変動によって水不足になれば、タービンが回せなくなり、ブラジル、ペルー、エクアドル、ボリビアへの電力供給に障害が出る。

「これらの国々は、アマゾン川からの電力供給方法を見直すべきだと思います。慎重に検討することなく物事が決定され、大局を見ていないというのが現状です」。米国バージニア州にあるジョージ・メイソン大学教授で国連財団のアマゾン生物多様性専門家であるトーマス・ラブジョイ氏はこのように語る。

 米国では現在、川を元の自然な状態に戻すためにダムを解体する流れに転じているが、一方でアフリカのコンゴ川、ナイル川、アジアのメコン川など、多くの発展途上国では逆に、ダム建設が増加している(参考記事:「ダム建設に揺れるメコン川」)。

2012年、建設中のジラウ・ダムの現場で働く作業員。(PHOTOGRAPH BY NOAH FRIEDMAN-RUDOVSKY, THE NEW YORK TIMES/REDUX)
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安くて豊富な水力発電だが

 水力発電は世界の電力量の約16%を占めているが、ラテンアメリカでは70%以上にのぼり、特にアマゾン川流域ではその傾向が顕著だ。ここでは、水力は他の資源に比べて豊富で低コストだ。なかでも、2億人の人口を抱えるブラジルが、地域のエネルギー需要、つまりアマゾンのダム建設への需要を引き上げている。

 ブラジルの低地を含むアマゾンの平地で水力発電を行うには、強力な水の落下を人工的に作り出すために、水位を上昇させなければならず、巨大なダムが必要となる。ダムの上流に湖ができれば、数万人もの先住民たちは立ち退きを迫られる。

アマゾンの熱帯雨林の中に計画されているベロ・モンテ水力発電ダムで働く従業員のために建てられた住居。専門家らは、ダムの建設がさらなる開発を招き、森林破壊につながることを懸念している。(PHOTOGRAPH BY PAULO SANTOS, REUTERS)
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 山の上の方は、川の傾斜が急なのでダム湖も発電施設も小さい。しかし、アンデス山脈の東側、アマゾン川上流にあるダムは、別の問題を抱えている。肥沃な堆積物の流れをブロックしてしまうのだ。アマゾン川の濁りの元となっている粒子の細かい沈泥(シルト)は、生態系に欠かすことのできない栄養を提供する有機物を豊富に含んでいる。

 川の魚やその他の生物に栄養を届けるだけではない。12月から5月にかけて、この一帯では季節的な洪水が起こる。場所によっては9メートルも水位が上昇し、その流れに乗って堆積物は沼地や低地の森林に行き渡る。

「もし堆積物の流れを止めてしまえば、下流の氾濫原では土壌が不足し、結果として栄養が不足してしまいます」と、ワシントン大学の河川水系研究グループの生態学者ジェフリー・リッチー氏は説明する。

 さらにその上流では、ダムのせいで湿地帯が干上がり、魚の産卵場が消滅してしまう可能性がある。魚は数千キロもの旅をして、アンデスの上流へ卵を産みにやってくるのだ。

 もしこれらの魚が下流にあるダムを乗り越えられなければ、絶滅の危機にさらされる可能性も出てくる。ただ、30年以上にわたってアマゾン川とその生物多様性について研究してきた野生生物保全協会のマイケル・ゴールディング氏は、魚の中には、環境に適応して下流で産卵するものも出てくるかもしれないと話す。

 最近の水力発電所では、ダムのサイズが小さな「流れ込み式」という方式が用いられる。地域の土壌の流れを研究しているペルーの地球化学者ラウル・エスピノーザ氏によると、この手のダムでせき止められる沈泥の量は、全体の20%に抑えることができるという。

 流れ込み式を採用しているブラジルのマデイラ川にある2つのダムは、魚が迂回できる通り道を作ることになっていたが、実際に実現したのは1つのダムだけだ。また、迂回路が作られたとしても、魚がその通り道を見つけられるかどうかは別問題だとゴールディング氏は指摘する。

 魚の産卵が減少すれば、川の生物多様性だけではなく、その魚をたんぱく源および収入源として頼っている地元の人々の食と生活にも影響が及ぶ。

アマゾン流域のシングー川に計画されている巨大なベロ・モンテ・ダムの建設をめぐる2013年の説明会で、反対派の先住民ムルドゥクの人々に説明を行うブラジル政府高官。ダムの上流にできる湖によって、多くの場合地元住民が立ち退きを求められる。(PHOTGRAPH BY UESLEI MARCELINO, REUTERS)
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森林も危機に

 さらにその影響は、川だけでなくアマゾンの森林全体にまで波及する。

 オーストラリアのケアンズにあるジェームスクック大学、熱帯環境および持続可能科学センターの生物学者ウィリアム・ローレンス氏は、ダム建設のために道路が通れば、土地の投機家、農業関係者、畜産業者、麻薬の栽培者、非合法の採金者まであらゆる人間が集まってくると話す。

 その結果起こる森林破壊は、「雪崩式に気候変動にまで影響を与えることにもなりかねません」とローレンス氏。森林がまばらになり、そこから低木層が乾燥しはじめると、農場や牧場の焼畑を行う際に森林火災が起きやすくなる。気候変動も手伝って乾燥はさらに悪化し、水力発電に必要な降水量まで減ってしまうかもしれない。

 アマゾン川の水量は雨期と乾期で大幅に変化するため、巨大な設備に見合う発電量を実現できないダムもある。

 干ばつの恐れが現実的なものである以上、電力会社は代替発電も用意しておかなければならない。一般的なのは化石燃料を使用する火力発電だが、こちらは地球温暖化の原因になると、米州開発銀行の持続可能エネルギー主任スペシャリスト、アーナルド・ビエラ氏は指摘している。

シングー川流域の保護区に生息する鳥。アマゾンは、色鮮やかな固有の生物多様性で知られる。シングー川に建設中の巨大なベロ・モンテ・ダムについては、その大きさに見合うだけの発電量が得られないという指摘がある。(PHOTOGRAPH BY AARON VINCENT ELKAIM)
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文=Barbara Fraser/訳=ルーバー荒井ハンナ

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