ニュージーランドに暮らし、水中写真を撮る、8本腕の生き物は?

 答えは、ある水族館で飼育されている雌のタコ、ランボー(Rambo)だ。水槽の壁に設置された防水デジタルカメラで来場者の写真を撮影するよう訓練されている。カメラの前で子供たちがポーズをとる動画をソニーが公開し、早くも話題をさらっている。

 ニュージーランドの動物行動学者マーク・ベッテ氏とアニマルズ・オンQ社は、餌を報酬に、ブザーが鳴ったらカメラのシャッターを押すようランボーを訓練した。アニマルズ・オンQ社はテレビや映画に出演させる動物を訓練している。

 ランボーの訓練に要した期間は6~8週間ほど。最も苦労したのは、好奇心の強いタコの力に耐えられるカメラケースをつくること。ベッテ氏によると、ランボーが写真を撮るまでにさほど時間はかからなかったが、アクション映画の主人公と同じ名に恥じず、2台のカメラを破壊した。「(カメラケース完成までに)10回以上は試行錯誤を繰り返しました」とベッテ氏は振り返る。

 ブザーの音と報酬を関連づけるのは容易だった。こちらはわずか3回で成功したと、ベッテ氏は話す。その後、ブザーの音が聞こえたときに写真を撮れば、餌が食べられると教え込んだ。

好奇心旺盛で、頭もいい

 米カリフォルニア科学アカデミーの水族館に所属する生物学者リッチ・ロス氏は、タコは何かを触るとき、多くの場合、分解すれば中身を食べられるかもしれないと期待していると説明する。「タコは餌につられやすい生き物です」

 また、タコは好奇心も旺盛だ。ロス氏の水族館では、飼育係がおもちゃや遊びを用意しなければ、タコはすぐに飽きてしまうという。そして、退屈したタコは自分のすみかまで壊そうとするなど、自ら暇つぶしを始めてしまう。

 ナショナル ジオグラフィックの写真家ブライアン・スケリー氏はタコの知能に最大の敬意を抱いている。「彼らの写真を撮影するときはまさに知恵比べです」。なぜなら、タコたちは皮膚の色や質感を自在に変え、狭い場所に無理やり入り込むことができるためだ。「タコを相手にしていると、気づいたら声を出して笑っています。とにかく手に負えない動物です」

 ニュージーランド、オークランドにあるケリー・タールトンズ海洋生物水族館では、ランボーが撮影した写真を1.50米ドル(約180円)で販売している。収益は水族館の運営やプログラムに使われる予定だ。

文=Ralph Martins/訳=米井香織