- NOVEMBER 2017 -

ナショナル ジオグラフィック協会 写真資料室から

ちゃんちゃんこ姿の猫

 ちゃんちゃんこのようなものを羽織って、こちらをじっと見つめるのは、東京で撮影された猫。1938(昭和13)年11月号の猫特集に載った一枚だ。


「寒い冬の日、ニッポンの家猫は火鉢の周りに集まるか、女主人の膝掛けにくるまれるか、オーダーメードの粋なキモノに身を包む」と写真の説明にある。46ページに及ぶこの特集には、米国で撮影された猫のカラー写真25点のほか、ヨーロッパやインド、オーストラリアなどの猫の白黒写真22点が掲載されているが、服を着ているのはこの東京の猫だけだ。


 1975年刊行の『猫の民俗学』(大木卓著)には、この特集への言及がある。「近頃はあまり見ないが、冬になると猫に綿入れの赤いチャンチャンコ様のものをわざわざ作って着せてあるのを東京では以前よく見かけた。西洋人には珍しかったと見えて……(本誌に)その写真が紹介されていました」。


 人間は服を着せる一方で、猫に寄り添って暖をとってきた。布団に入れて使う昔ながらの行火(あんか)は、「猫行火」や単に「ねこ」と呼ばれることもある。暖房器具の名称に使うほど、猫には温かいというイメージがあるのだろう。本当は人間のほうこそが、猫のぬくもりを必要としているのかもしれない。


写真:THE TOKYO ASAHI