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- ナショナルジオグラフィック日本版
- 2016年9月号
- マヤを支配した蛇の王国
マヤを支配した蛇の王国
現在のメキシコから中米にかけて栄えたマヤ文明。都市国家がひしめく時代にあって、「蛇王朝」の王たちは、武力と外交を駆使して勢力を拡大していった。
古代都市ホルムルの遺跡は、グアテマラ北部の密林の奥にある。ホルムルはマヤ古典期(西暦250~900年)に栄えた都市だ。現在の中米およびメキシコ南部に当たる地域にマヤ文明が開花したこの時代は、政治的には複数の都市国家が覇権を争って絶え間なく衝突を繰り返した激動期でもあった。この間に、短期間とはいえ、一つの都市国家が圧倒的優位に立ち、「帝国」と呼べるほどの存在となった。
帝国に君臨したのは、蛇の頭の紋章文字を使っていた「蛇王朝」の王たちだ。蛇を意味するマヤ語から、「カーヌル王朝」とも呼ばれる。わずか20~30年前までは存在さえ知られていなかった王朝だが、ホルムルをはじめとする遺跡から発見された数々の証拠を基に、今、その物語が紡ぎ出されようとしている。
謎に満ちた「蛇王朝」
2013年、イタリア生まれのグアテマラ人考古学者フランシスコ・エストラーダ=ベリが率いる調査チームは、ホルムルの比較的大きなピラミッドの調査に着手し、儀式用の建物を見つけた。墓所の入り口の上に、全長8メートルもある帯状の装飾「フリーズ」が残されていた。
歴代の王名を刻んだマヤ文字の列に、蛇を意味する「『カーヌル』という文字を見つけたのです」とエストラーダ=ベリは話した。「これを発見するまで、私たちはマヤの研究者として無名でしたし、ホルムルの遺跡もよく知られていませんでした。それが突如として、マヤの歴史で最も刺激的な時代のど真ん中に躍り出たのです」
※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2016年9月号でどうぞ。
編集をしていて興味深かったのは、王たちの名前です。「縛られた石のジャガー」「空の目撃者」「渦巻き蛇」「諸都市を揺るがす者」「炎の鉤爪」…現代人からすれば、想像力をかき立てられるエキゾチックな名前ばかりですが、同時代の人たちにとっては、畏怖の念を抱かせる崇高なものだったのでしょう。失われた時間を再構築し、王であれ戦士であれ、失われた声をよみがえらせる考古学者たちの好奇心と努力に感動です。(S.O.)