はるか昔から氷上で狩りをしてきたグリーンランドの猟師たち。海氷が減少する今、彼らは生活の転換を迫られている。

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消えゆく氷と極北の狩猟民

はるか昔から氷上で狩りをしてきたグリーンランドの猟師たち。海氷が減少する今、彼らは生活の転換を迫られている。

文=ティム・フォルジャー/写真=シリル・ジャズベック

 極北の地では、海が凍ると世界が広がる。昼間の時間は短くなるが、海氷の上を遠くまで移動できるようになるのだ。
 グリーンランドの人口はおよそ5万6000人。内陸部は住むのに適さないため、ほとんどが沿岸部に暮らしている。氷河や深く入り組んだフィヨルドに阻まれ、海辺に点在する村や町をつなぐ道路はない。

 今でこそ飛行機やヘリコプター、高速モーターボートなどで行き来できるようになったが、グリーンランド西岸のウマナック・フィヨルドぐらい北になると、昔は海氷が頼みだった。夏には海だった場所を、冬になると犬ぞりやスノーモービル、さらにはタクシーや燃料給油トラックまでもが走り、孤立した小さな集落の閉塞感を解消していたのだ。

海氷が減って岐路に立つグリーンランドの猟師

 ウマナック・フィヨルド周辺に住む人々は、狩猟と漁業で生計を立てている。漁業だけで結構な収入が確保できる世帯も多いが、小さな村はデンマーク政府からの補助金なしでは存続できない。補助金のおかげで、どんなに辺ぴな集落にもヘリポートや携帯電話の基地局が整備され、雑貨店や診療所、小学校もある。デンマークからの補助金は年間およそ700億円で、グリーンランドのGDPの実に4分の1を占める。

 小さな村々の経済をさらに脅かしているのが気候変動だ。近年、冬から春にかけて、海氷の厚さが安定しない期間が長くなっているのだ。海氷が厚すぎるとボートが出港できないし、薄すぎると犬ぞりやスノーモービルが走れない。海氷の不安定な状態は漁業にも影響を与えているが、とりわけ大きな打撃を受けているのが猟師たちだ。

 最近では、真冬でもフィヨルドの海氷は厚さ30センチほどにしかならないという。かつては12月から1月の間に凍結し、6月に解け始めていたが、今は2月に凍って4月には解けだす。そのため狩猟シーズンも短くなり、食料の調達も一苦労だ。猟師たちは家の冷凍庫にアザラシやトナカイ、クジラなどの肉を1年中保存してきたが、最近はそれもままならない。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年11月号でどうぞ。

編集者から

 グリーンランドは世界的に見ても自殺率が高いということに驚きました。記事の後半、ハードロックとホラー映画が好きな今どきの青年が登場しますが、彼の周りでも何人かの友達が自殺しています。「よくあることだけどね」とでも言いたげなその口調が、悲しくも印象的でした。
 本誌では2010年6月号「温暖化で変わるグリーンランド 緑の大地」でも、グリーンランドの人々を紹介しています。温暖化で氷が解ければ、豊富な天然資源が掘削しやすくなり、デンマークからの完全独立へ向けた希望となるだろうという話でしたが、それから5年たった今も、大きな進展はまだないようです。バックナンバーをお持ちの方は、今回の特集と比較して読んでみても面白いかもしれません。(編集M.N)

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