財政破綻した「自動車産業の都」デトロイト。だが、飾り気がなく、不動産が安いこの街には、その未来を信じるたくましい人々が集まりつつある。

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取り戻せ! われらのデトロイト

財政破綻した「自動車産業の都」デトロイト。だが、飾り気がなく、不動産が安いこの街には、その未来を信じるたくましい人々が集まりつつある。

文=スーザン・エイガー/写真=ウェイン・ローレンス

 大きな川が流れ、広々とした通りが延び、歴史的に重要な建築物が残るデトロイトは、かつて「中西部のパリ」と呼ばれていた。その後、世界中に自動車を送り出す「自動車産業の都」として成長を遂げ、第二次世界大戦中は「民主主義陣営の兵器工場」として軍需産業がさかんになった。労働組合が高水準の賃金を勝ち取り、仕事も安定していたため、従業員は持ち家やボートを買い、場合によっては別荘をもつ余裕すらあった。米国の中産階級は、デトロイトで生まれたとさえいわれている。

 だが1950年代後半、高速道路が整備されると郊外へ移る住民が増え始めた。そして1967年に起きたデトロイト暴動を機に、数万人規模で人口が流出。そのほとんどは白人世帯だった。

自動車メーカーの経営破綻と住宅危機で街の財政が破綻

 デトロイトの再生を予期させる出来事は、何度か起きている。暴動の翌年には、野球の大リーグのワールド・シリーズで、地元デトロイト・タイガースがセントルイス・カーディナルスを破って優勝した。再生への希望が再び高まったのは1970年代、自動車メーカーであるフォード・モーター社の創業者の孫が、超高層ビル群「ルネサンス・センター」を建設したときだった。だが、要塞のようにそびえる摩天楼は近寄りがたく、1999年と2000年には三つのカジノがオープンしたものの、抜本的な解決にはならなかった。2006年にはアメリカン・フットボールのリーグ決勝戦、スーパーボウルの開催地になり、現状打開のきっかけになるかと思われたが、現実は厳しかった。

 沈みゆくデトロイトにとどめを刺したのが、自動車メーカーのゼネラル・モーターズ社とクライスラー社の経営破綻。そして、2008年に火がついた住宅危機だった。不当な住宅ローンを組まされた所有者が支払い不能となって、数多くの物件が差し押さえに遭ったのだ。空き家となった住宅や廃校となった学校は略奪の標的となり、麻薬取引の温床と化した。そして不良少年たちの放火の的ともなった。

 デトロイトの面積は360平方キロ。これほど広大な都市をすべて再建しようなどと公言する者は誰もいない。だが、財政破綻の手続きが済んだことでムードは好転。街の雰囲気は以前よりかなり明るくなった。

 巨額の負債を抱えて破綻した「自動車産業の都」デトロイト。あれから2年が経過した今、この街のエンジンが再び回り始めようとしている。原動力は、デトロイトの未来を信じるたくましい人々だ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年5月号でどうぞ。

編集者から

 デメリットがあるのも承知で、「意思」のある人たちが何かをやらかしたいと集まってくる…好きです、こういう街。数年後のデトロイトは、とんでもない人気都市になっているかもしれません。それにしても一軒家が数万円で買えるとは! 老後の心配なんてバカバカしく思えてきます。いざとなったら私も移住? いや、日本にもそういう場所はあるかも。まあ、なんとか生きていけるんだなと、少し気持ちが軽くなりました。(編集H.O)

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