海洋動物に記録装置を取り付け、そのデータから見えない生態を“観察”する生物学者、渡辺佑基。種の違いを超えた生命の法則を見つけるのが目的だ。

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日本のエクスプローラー 渡辺佑基 「バイオロギング」で迫る海洋動物の素顔

海洋動物に記録装置を取り付け、そのデータから見えない生態を“観察”する生物学者、渡辺佑基。種の違いを超えた生命の法則を見つけるのが目的だ。

文=江口 絵理

 水の中で暮らす動物を、人間が追いながら観察するのは不可能に近い。ほんの数十年前まで、魚はもちろん、ペンギンやアザラシ、クジラやウミガメの日常生活は、ごく浅いエリアで限られた時間だけ観察するか、あるいは彼らが陸に上がっている間だけ観察するにとどまっていた。しかしそれでは、彼らの生活のごく一部しかわからない。

 そこで生まれたのが、人間が動物を追い回して観察するのではなく、「データロガー」と呼ばれる小さな機器を身に付けた動物自身に記録を取ってきてもらう、「バイオロギング」という方法だ。
「生物(バイオ)」と「記録(ログ)」でバイオロギング。それまでの観察方法の延長とはまったく異なる、発想の転換だった。

 ただ、バイオロギングには「動物からロガーを回収しないとデータが得られない」という問題がある。子育て中のアザラシやペンギンなら、必ず子の元に定期的に戻ってくるので、ロガーの回収は容易だ。ところが、子育てをしない魚や、繁殖期以外のアザラシやペンギンは同じ場所に戻ってくるとは限らない。渡辺佑基はこの難題を解決し、その後、バイオロギングが調査の現場で広く使われる契機をつくった。

「人間が動物の行動を追いきれないなら、動物自身に記録してもらう」という発想の転換で生まれたバイオロギング。「人間がロガーを動物から回収できないなら、ロガー自ら回収できるところに出てもらう」という渡辺のアイデアは、「再び捕まえられる動物しか調べられない」バイオロギングの限界を取り払う画期的なものだった。今では多くの研究者が、渡辺が考案した回収システムを応用して研究を進めている。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年5月号でどうぞ。

編集者から

 サメやマグロなどの魚をはじめ、ペンギンやアザラシなども含めた海洋動物全般について、直接観察するのが難しい海の動物のナゾを解明する「バイオロギング」。渡辺佑基さんはこの調査手法の達人で、取材時は生きものたちの面白い話が次々に飛び出しました。海洋動物の興味深い生態については本誌の記事をご覧いただくとして、もうひとつ強く印象に残ったエピソードが、アデリーペンギンを調査したときに体験したいわば「南極ぼけ」でした。
 南極へは調査船の「しらせ」で行くため、自分の調査が終わったからといって勝手に帰るわけにはいきません。渡辺さんは調査が終わったあと、ほとんど何もすることがないのに、もう1人の共同研究者と2人きりで何十日も観察小屋で暮らしたそうです。顔を合わせる相手は毎日同じ。衣食住の設備は必要最低限。インターネットもありません。そのヒマな時間は本当につらかったそうです。そして、日本に帰ると、電車の切符の買い方どころか、お金の使い方がわからなくなったり、予定を立てられなくなったりするとのこと。エクスプローラーと聞くと、過酷な自然や深い謎などに立ち向かう勇壮な姿をつい想像しがちですが、いろんな大変さがあるものです。
 渡辺さんには毎月の連載をはじめ、これまでにも「南極なう!」(共著)や「『研究室』に行ってみた。」でもWebナショジオにご登場いただいています。ぜひあわせてご覧ください。(編集K.S)

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