地球を舞台に壮大な旅「グレートジャーニー」を続ける探検家、関野吉晴。次々と新たな挑戦に乗り出し、前進する力の源は、何なのだろうか。

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関野吉晴 探求する人生

地球を舞台に壮大な旅「グレートジャーニー」を続ける探検家、関野吉晴。次々と新たな挑戦に乗り出し、前進する力の源は、何なのだろうか。

文・写真=関野 吉晴

 大航海時代のマゼランやコロンブス、ピサロらを探検や冒険に駆りたてたのは「三つのG」、すなわち黄金(Gold)、栄光(Glory)、宗教的情熱(Gospel)だといわれている。しかし現在では、テレビや新聞、雑誌に登場して茶の間の喝采を浴びる程度の栄光と、それに付随してくるちっぽけな“黄金”がせいぜいだろう。その意味では現代の探検・冒険はまったくみみっちくなってしまった。
 それでも南極点、北極点への一番乗りやエベレスト初登頂などは、国威発揚の使命を帯びていた。今では探検も冒険も国を背負うことなどなく、その動機は自己実現や達成感といった、個人的なものとなっている。

 フランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーは『告白録』でこう述べている。「私には非常に激しい情熱があって、それのかきたてられているあいだは…自制心も、体裁も、心配も礼儀もあったものではない。…心にかかるただ一つの目的を他にしては、宇宙も物の数ではない」

 新たなプランが頭に浮かんだ時、私はまさにルソーになっていて、自分でもどうしようもない。探検を続けてきた原動力の一つは好奇心であり、何よりもおもしろいから、自分が夢中になれるから続けてきた。まだ見ぬ世界に入り込むことによって、新たな気づきがある時、心を揺さぶられる時、体中に高揚感を感じるのだ。

「グレートジャーニー」も失敗の連続

 グレートジャーニーの長大な旅は、実は多くのミニ・エクスペディションの連続だ。たとえばパタゴニアのマゼラン海峡をカヤックで漕ぎ渡る、あるいはシベリアを徒歩とトナカイぞり、犬ぞりで横断するといった行程を積み重ねていった。最終的にゴールに着いたことから、私は失敗したことがないのだと思われがちだ。しかし実際は失敗の連続だった。

 たとえばベーリング海峡で、最初は凍った海を徒歩で渡ろうとしたが、地球温暖化の影響で海峡が凍らない。そこでエスキモーと一緒に、クジラ捕りに使う皮張りの舟で渡ることにした。3度チャレンジしたが、天候が悪く、失敗に終わった。最後はシーカヤックで渡ろうとしたが、海が荒れて身動きできない。待ち続けた。10日待って、やっと風がやんだ。こんなチャンスは二度とないと思い、120キロの距離を、ほとんど24時間漕ぎ続けて渡った。

 すべてこんな具合だ。一つの成功の陰には、いくつもの失敗がある。全行程でおよそ40のミニ・エクスペディションをやり遂げたが、そこには100以上の失敗があったわけだ。しかし、失敗は人を賢くしてくれる。失敗したら反省し、その原因を検討して、再挑戦すればいい。生きてさえいれば、何回でもチャレンジはできるのだ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年4月号でどうぞ。

編集者から

 アフリカから南米最南端まで、人類の拡散ルートを歩くポール・サロペックの旅を、ナショジオでは2013年からお伝えしています。実はその20年前、このルートを逆向きにさかのぼった日本人探検家がいます。「グレートジャーニー」をテーマに、地球を舞台に壮大な旅をしてきた関野吉晴さんです。今月の大特集では、「日本のエクスプローラー」を代表する一人である関野さんに登場いただき、探求の旅に挑み続ける原動力は何なのか、じっくりと明かしていただきました。
 手づくりの舟で海を渡った、関野さんの最新の旅の様子は、ナショジオ電子版の動画でもご覧いただけます。この旅を記録した映画『縄文号とパクール号の航海』もちょうど、2015年春に公開中。なかなか予定通りには進まない旅の現実や、航海中の船上での暮らしぶりなど、貴重なシーンの数々を見るチャンスです。詳しくは公式サイトでご確認のうえ、この機会にぜひどうぞ!(編集H.I)

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