遠くない将来、気候変動の影響で、洪水の増加や土地の水没が予想される米国フロリダ州。海面上昇への対策は、その未来を救えるか。

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フロリダ発 海面上昇とマネー

遠くない将来、気候変動の影響で、洪水の増加や土地の水没が予想される米国フロリダ州。海面上昇への対策は、その未来を救えるか。

文=ローラ・パーカー/写真=ジョージ・スタインメッツ

 米国フロリダ州の大都市マイアミでは、不動産開発が経済の原動力だ。最高級のぜいたくが人気で、5億6000万ドルをかけて建設中のポルシェ・デザイン・タワーは、車ごと乗り込めるガラス張りのエレベーターを売りにしている。フロリダ州の人口の4分の3は高層ビルが立ち並ぶ沿岸の郡に住み、州経済の5分の4を支える。

 だが同州は、今後数十年にわたって異常気象に見舞われると予想されている。雨期には荒天が増え、ハリケーンは激しさを増し、高潮はさらに高くなるだろう。
 最も深刻な被害を受けるのは、全長2170キロに及ぶ沿岸地域だ。すでに砂浜のほぼ半分は、海水に浸食されている。猛暑や干ばつが襲えば、東海岸地域に冬の野菜を供給している農業が打撃を受け、フロリダの三大農産物であるトマト、サトウキビ、柑橘類の生産も脅かされる。

 南フロリダの4郡(モンロー、マイアミデード、ブロワード、パームビーチ)では、満潮線から1.2メートルに満たない低地に、約240万人が暮らしている。フォートローダーデールやハリウッド、マイアミビーチなどの海に面した都市では、通常よりも潮位が高くなる大潮の時期に、たびたび道路が冠水している。

 南フロリダの4郡は行動計画の概要を作成し、2060年までに少しずつ地域を「再設計」しようとしている。詳しい青写真ができるのは数年後になりそうだが、その方法は決して目新しいものではない。「やることは従来と同じです」と、土地利用を専門とするマイアミの弁護士ジョー・フレミングは言う。「排水と、構造物を高くすることに尽きます」

浸水想定地域に高層ビルが建つフロリダ

 そのフロリダでは現在も、2100年までに浸水することが想定される地域に、尋常ではないペースで建物が建っている。ある日の早朝、ブロワード郡北西部の上空を飛行していると、エバーグレーズ湿地の住宅地が見えた。宅地内の人造湖では重機で湖底の土をさらい、細長い半島を造成している。

 マイアミの中心街を流れるマイアミ川をボートでめぐったときには、2014年春に1億2500万ドル(この地域の最高値)で売れたという、川岸に面した0.5ヘクタールの一画を目にした。そのすぐ近くでは約10億ドルの「ブリッケル・シティ・センター」が建設中で、街の反対側には1800室の巨大ホテルを併設した複合施設が建つ予定だという。

 徐々に迫りくる気候変動への恐れは、開発に歯止めをかける要因となりうる。気候変動が南フロリダにもたらす経済問題について、財界人たちは話したがらない。
「まるで黙っていれば問題は起こらないと言っているようなものです」と、米ノバ・サウスイースタン大学の環境法学者リチャード・グラッソは話す。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年4月号でどうぞ。

編集者から

「科学を疑えば、その報いも訪れる」「気候変動の議論において、科学への疑いは地球規模で永続的な悪影響を及ぼしかねない」…これは3月号「科学を疑う」からの抜粋ですが、フロリダではまさにその懸念が現実のものになろうとしているのだと思いました。
 現実に存在する問題を、見て見ぬふりをする状況は、日本の原発をめぐる議論に通じるものがある気がします。(編集M.N)

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