凧(たこ)揚げをしている子どもたちのそばで、たくさんの大根が木につるされている。ナショナル ジオグラフィックの写真アーカイブを検索しているときにこの写真を見つけ、思わず目を留めた。
面白い光景だが、撮影時期や場所がわからない。米国ワシントンの本部に保管されている写真プリントの裏に、手がかりとなる情報が記載されているだろうか。そう思って、担当者に調べてもらったものの、書かれていたのはこれだけだった。「凧揚げ。小さな木につるしてある大根は、畑から抜いて洗ったばかりのもので、この後市場へ運ばれていく」
この写真を撮ったのは、100年以上前に本誌の記者と写真家として活躍したエライザ・R・シドモア。1856(安政3)年に米国で生まれ、ナショナル ジオグラフィック協会の理事も務めた女性だ。1884(明治17)年からたびたび日本を訪れた親日家で、そのときの記録を本誌に寄稿したほか、著書『シドモア日本紀行』としても残している。1925(大正14)年にスイスのジュネーブに移住し、28年に同地で永眠した。このことから考えると、撮影時期は明治半ばから大正であるとは言える。
今でもこんな風景は見られるだろうか。凧と大根畑を探して、どこか遠くを旅してみたいと思った。
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