活字を探して棚から棚へ

英語版1920年10月号より

2020.09.29
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写真:THOMAS E.GREEN
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 両側の棚にびっしりと収められているのは、新聞の印刷に使う活字。ここは、福澤諭吉が創刊した日刊紙『時事新報』の活字を組む部屋だ。1920(大正9)年10月号の特集「日本の新聞の制作現場」に掲載された一枚。

 特集の筆者トマス・E・グリーンのレポートによると、『時事新報』は全8ページで、発行部数はおよそ11万部。編集スタッフは全員が慶応義塾大学の出身者だ。編集局は午前11時頃に業務を開始し、午後5時には終える。地方に発送するための初版は、夜行列車に間に合わせるため、午後8時までに印刷を始めなければならなかった。

 当時は印刷用の組版を作るために、金属製の活字を組む「植字」の工程が必要だった。日本語には文字が何千種類もあるから、植字工が一人で活字を探していては間に合わない。そこで、植字工には、活字拾いに専念する「文選工」が何人か割り当てられた。文選工は目的の文字を忘れないようにぶつぶつ唱えながら、棚から棚へ探し回っていたと、グリーンは書いている。そうやって集めた活字を、植字工が原稿通りに組んでいく。

 こうして組版が完成すると、入念な校正を経て印刷に入る。印刷機は米国のものに似ていて、1時間に最高で30万部も刷ることができたという。

この記事はナショナル ジオグラフィック日本版2020年10月号に掲載されたものです。

写真:THOMAS E.GREEN

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