車窓を眺めながら、ビールの入ったグラスを傾ける男性たち。奥の壁にある速度計をよく見ると、時速200キロを超えている。ここは東海道新幹線のビュッフェ車だ。1969(昭和44)年9月号の特集「来るべき交通革命」の1枚で、新幹線の開業が64年10月1日であることを考えると、撮影時期は60年代半ばから後半だろう。ビュッフェ車が廃止された今では見られない光景だ。「最高時速の210キロに迫る速度でも、乗客はこぼす心配なしにビールやお茶を飲める」と解説され、揺れの少なさを伝えている。
この特集では、運行管理システムを使用した新幹線を「世界で最も自動化が進み、成功した都市間鉄道システム」と呼び、69年に初飛行したばかりの超音速旅客機コンコルドや大型ジェット旅客機ボーイング747とともに大きく取り上げている。車の大渋滞に悩まされていた米国で大勢の人々を安全かつ快適に輸送できる交通機関として、特集の筆者は新幹線のような高速鉄道に期待を寄せていた。