ナショナル ジオグラフィック英語版1933年3月号より(写真:W. ROBERT MOORE)
ナショナル ジオグラフィック英語版1933年3月号より(写真:W. ROBERT MOORE)
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 木々の奥に見えるピラミッド形の屋根は、当時建設中だった帝国議会議事堂(現在の国会議事堂)。その右側に堂々と立つのは、19世紀末に旧日本軍の参謀総長を務めた有栖川宮熾仁(たるひと)親王の騎馬像だ。

 この騎馬像は1903年、東京・三宅坂にあった参謀本部前に建立された。ここからは霞が関、虎ノ門、新橋といったビジネス街が近い。1933(昭和8)年3月号に掲載されたこの写真には、「東京のビジネスの中心街を見下ろす有栖川宮の像」との説明が添えられている。

 参謀本部が1941年に市ケ谷に移転した後も、騎馬像は三宅坂に残され、終戦を迎えた。だが1962年、道路拡幅事業のために、ここから南西に4キロほど離れた有栖川宮記念公園に移設された。

 参謀本部のあった場所は現在、国会前庭という美しい庭園となっている。園内を歩いても、軍の重要機関があったことを感じさせる痕跡は見当たらない。強いて挙げるなら、園内の日本水準原点標庫(水準測量の基準点を保護する建物)に刻まれた「大日本帝国」の文字ぐらいだろうか。

 ここからビジネスの中心街を見下ろしていた騎馬像は今、緑豊かな公園の片隅から広場を見守っている。夕方に訪れたとき、広場では子どもたちがサッカーを楽しんでいた。

この記事はナショナル ジオグラフィック日本版2022年8月号に掲載されたものです。

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