ナショナル ジオグラフィック英語版1990年10月号より。写真: EMORY KRISTOF, MICHAEL COLE, AND KEITH A. MOOREHEAD
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 水深およそ137メートル。真っ暗な駿河湾の海底で無人潜水機の明かりに浮かび上がったのは、タカアシガニの雌だ。この状態で左右の幅は1.8メートルほどと推定される。タカアシガニは世界最大のカニで、両方のはさみ脚を広げた長さが3メートルを超すこともある。普段は水深数百メートルの深海底にすむが、産卵期になると浅い海にやって来る。

 駿河湾は水深が2500メートルにもなる、日本で最も深い湾だ。そこには浅い海の生き物に加え、タカアシガニなどの深海生物も息づく。この豊かな湾を記録するため、1990(平成2)年10月号の特集「駿河湾」では、スキューバダイビングによる撮影のほか、2台の無人潜水機やフランスの有人潜水調査艇「ノチール」を使った深海の撮影も行われた。

 ノチールには写真家だけでなく海洋生物学者も乗り込んだ。研究者にとっては、普段は標本でしか見られない深海生物の生きた姿を観察できる絶好の機会だ。水深1200メートル付近では、全長7メートルほどの巨大なオンデンザメにぶつかり、ノチールの艇体がぐらりと揺れた。潜航した最深部、水深約2130メートルでは、白い色をした深海魚のソコボウズが亡霊のように暗黒の世界をゆっくりと泳いでいた。

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