1911(明治44)年11月号に掲載されたこの写真は、東京の荒川堤にあった桜の名所。さまざまな色や品種の桜を楽しめたことから「五色桜」の名で親しまれた。「花見の人波は絶えず、皆われを忘れたように桜の美しさに酔っている」との描写が、当時のにぎわいを伝えている。
1912年には、この五色桜を接ぎ木した3000本余りの苗木が米国の首都ワシントンに寄贈された。荒川堤の桜は大気汚染や戦禍の影響で戦後まもなく姿を消したが、遠い異国の地で咲き続けた。81年にはワシントンに渡った桜の“ 里帰り”が実現し、その苗木が東京・足立区内の公園に植えられた。現在の荒川堤では、平成時代に植栽された新たな五色桜が根を下ろし、大勢の人でにぎわう日の到来を待っている。