横浜の映画館もニュース映画を流し、戦意高揚に努めた。入場料は10銭だ。戦前はハリウッド映画も人気を博した。(WILLARD PRICE/National Geographic 1942年8月号「知られざる日本」より)

「日本人のもう一つの強みは、良心の欠如である。彼らは「日本を発展させるものは何でも正しい」という道徳律に縛られている。国家と天皇は神聖であり、あらゆる善悪の基準を超越する。日本の行く手を阻むような国際協定なら破棄するだろう。しかし、日本人同士となると、付き合いは誠実なものだ。この国では家の玄関に鍵をかけずとも、泥棒が入ることはまれだ。だが、諸外国の権利など気にもとめない。

 私たちの最大の脅威は、こうした誤りに導かれた日本人の熱烈な忠誠心だ。日本人の狂信性や能力を過少評価したり、逆に過大評価したりすることには気を付けなければならない。

東京近郊のバスの中に張り出された、ニュース映画の宣伝ポスター。“勇壮無敵皇軍”の文字が躍った。(WILLARD PRICE/National Geographic 1942年8月号「知られざる日本」より)

 日本の弱点の一つは、敵を過小評価していることである。日本は米国の経済力を認識しているが、その豊かさがかえって米国の発展への活力を奪っていると思い込んでいる。日本人には、上からの命令に盲従するという弱点もある。慎重で、こと細かな事前の計画によって成功してきた日本は、その計画を覆す事態が発生した時には、狼狽してしまう」

「愚か」「人命軽視」「良心の欠如」と言いたい放題だが、こうしたいかにも敵国に対するまなざしは、終戦とともに落ち着いていく。

 次に紹介するのは、1946年6月号の特集「古い太陽が沈む日本(Sunset in the East)」。執筆したのは、米沿海警備隊のトップとして戦後1年間日本に駐留したブレア・A・ウォリザーだ。彼は終戦直後に日本にやってきた時の様子を、驚きをもって描いている。

朝鮮半島から日本に帰る引き揚げ船の乗客たち。船のデッキで火を起こし、食事を用意する。(PRESS ASSOC INC/National Geographic 1946年6月号「古い太陽が沈む日本」より)

「連合国軍の艦隊が1945年9月に日本各地の港に錨を下ろしたとき、日本人も日本という国も多くは謎に包まれていた。不意打ちを受けないように警戒しながら、私たちは上陸地点の丘や岩場を調べた。流血の惨事にならずに上陸地を見つけ、爆撃や身投げする日本人の「バンザイ」の叫び声に悩まされずにすんだことを、私たちは感謝した。初めて上陸し、通りをジープで進んだときは、しっかりヘルメットをかぶり、武器を携帯した。何が起きるか、まったく予想がつかなかったのだ。しかし私たちが目にしたのは、おびえた笑みを浮かべるいくつもの顔だった。貧しい身なりの年寄りや内気な少女、歓声を上げて挨拶をしてくれる子供たちだ」

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