日本式の風呂に入る米国人。1945(昭和20)年11月号の特集「近代日本の仮面の下」に掲載されたこの1枚には、そんな見出しが付いている。説明によると、浴槽と風呂釡は板で仕切られ、写真ではわかりにくいが、右下から燃料の木炭をくべるのだという。浴槽は見た目よりも深く、浴室の床より下まで続いている。
入浴中の女性は、特集の筆者ウィラード・プライスの妻だ。夫妻は5年間、神奈川県の葉山御用邸に近い小さな家に住んでいた。プライスは日本式の風呂を気に入っていたようで、1938年に刊行された著書『日の出の子達』に「お湯のなかで、愉悦を満喫し、閉ぢた毛孔を開き、疲れた筋肉を緩めるのは、楽しきもの」(澤田謙訳)と書いている。米国の浴槽には「子犬を洗う分」ほどしか湯が入っていない。米国にはもっと深い浴槽が必要だと、プライスは嘆いていた。
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