怪物など信じないし、恐れもしないという人もいるだろう。しかし、人が世界を理解する過程で、怪物が重要な役割を果たしてきたことは間違いない。人々は、理解できない現象に遭遇したとき、それを説明するために怪物をつくり出してきたとも言える。

 例えば、古生物の化石。今から2000年ほど前、スキタイの金鉱労働者たちがゴビ砂漠で、くちばしとかぎ爪、大きな肩甲骨を持つ骨格を見つけた。おそらくはプロトケラトプスの骨格だと思われるが、当時の彼らは恐竜を知るよしもなく、作り出した怪物が、上半身がワシ、下半身がライオンで、隠された黄金を守る「グリフォン」だ。

 北米の太平洋岸に暮らす先住民の間には、大地を揺らし引き裂くほどの怪物との戦いが言い伝えられている。見た目は大蛇のようで、自在に姿を変える「アヤホス」だ。この言い伝えに登場する場所はシアトル断層とほぼ一致するため、後に古代に起きた地震の発見につながった。

 日本では、地下に暮らす大ナマズが体を揺すったとき、地震が起きると考えられてきた。ナマズに地震を予知する能力があるとも言われており、この俗説を検証する研究もある。日本ではナマズは緊急地震速報のマークにも採用されている。

 そして現代でも、不安を反映した怪物が作り出される。2019年には、人間の女性とニワトリを掛け合わせた「モモ」がネットに登場し、子供たちを自殺に誘うという話がネットを席巻した。怪物がソーシャルメディアで拡散する時代になったということだ。

 人が未知の世界に踏み出そうとする限り、私たちはこれからも、自分たちの想像力が生み出した怪物に付きまとわれるのだろう。

文=SYDNEY COMBS/訳=米井香織

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