•  授乳後、一休みするホッキョクグマの母親。カナダ、マニトバ州のワプスク国立公園で撮影。
      ホッキョクグマは春につがいを作るが、妊娠するのは秋になってからだ。夏の間に狩りをして体重を増やすことに成功したメスだけが子を産む。このひたすら食べ続ける数カ月の間に100キロ以上体重が増えることもある。これはすべて巣ごもりのためだ。北極地方のどこをすみかにするかにもよるが、ホッキョクグマの母親は、最長で8カ月もの間飲まず食わずで雪中の巣穴にこもる。
     子どもは通常2頭生まれ、数カ月は巣穴で高脂肪の母乳を飲んで過ごす。母親は2、3年の間、子グマをオスのホッキョクグマを含む敵から守りながら大切に育てる。泳ぎや狩りの仕方、将来の家族のために巣穴を作る方法など、氷の上で生きていくために必要な技術も教える。(PHOTOGRAPH BY NORBERT ROSING, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

  •  ゲラダヒヒは、しばしばヒヒと間違われるが、現存するゲラダヒヒ属(Theropithecus)の唯一の種だ。かつてこの属は、複数の種がアフリカからインドやスペインにまで広く分布していた。ゲラダヒヒは社会的な動物で、メスを中心とする強い絆で結ばれた家族集団で生活する。この絆は毛づくろいなどの行為を通じて強化され、生涯にわたって続く。
     絆が最初に育まれるのは母と子の間においてだ。「母親は実際、子どもがゲラダヒヒの社会で社会生活を送れるようにする手助けをしています」と話すのは、動物行動学者のジェニファー・ヴェルドリン氏。そのための重要な方法が遊びだと言う。「ゲラダヒヒを含むすべての種の母親が、子どもと遊んでやります。これは子どもの成長にとって大切な要素です。例えば、霊長類が仲間同士で遊ぶときに見せる『プレイフェイス』と呼ばれる口を丸く開ける表情がありますが、ゲラダヒヒの子どもは遊びの中で母親を真似ることでこれを覚えます」(PHOTOGRAPH BY JEFFREY KERBY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

  •  広大なモンゴル平原を見渡すセーカーハヤブサとヒナ。セーカーハヤブサは、コウノトリ、ワシなど、ほかの鳥が作った巣を使ってヒナを育てると、英エジンバラ大学の行動生態学者、パー・スミセス氏は説明する。
     写真の母鳥は1カ月以上も巣を離れることなく卵を抱き続け、その間つがいのオスが食べ物を運んだ。卵がかえると2羽で世話し、騒がしいヒナは約50日後に巣立っていった。スミセス氏によると、鳥はほかの動物に比べて、このような家族中心のライフスタイルが一般的だ。「鳥は概してよい親です」(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

  •  母親の遠吠えに興奮して立ち上がるハイイロオオカミの子。米モンタナ州で撮影。オオカミの家族は、子どもに対して驚くほど忍耐強いと動物行動学者のジェニファー・ヴェルドリン氏は語る。「親や群れの仲間は、子どものふざけた行為に対して非常に寛容です。オオカミとして生きるためのルールを、子どもは遊びやおとなとの触れ合いを通じて学びます。群れ全体で支えるのです」
     遠吠えは、コミュニケーションの手段であり、絶対に身につけなければならない技術だ。「多くの種と同様に、オオカミも良い振る舞いの手本を見せ、厳しい規律や罰を示すことで子どもの教育をします」とヴェルドリン氏は説明する。
     母親と父親は、その群れで繁殖をする唯一の存在であり、巣立つ前の子ども、つがいになっていないそのおじやおば、血縁のないオオカミなどからなる群れを統率する。毎年生まれる子どもの世話を手伝うのは、年上のきょうだいたち。オオカミは約2歳で成熟し、一部は群れを出て別の群れに加わり、あるいは別のはぐれオオカミと一緒になって自分たちの群れを作る。(PHOTOGRAPH BY NORBERT ROSING, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

  •  ザトウクジラは、2、3年にごとに1頭だけ子を産み、注意深く育てる。子どもは丸1年間母乳を飲み、10歳になるまで成長を続ける。この間、親子は出産地の熱帯海域から冬の豊かな餌場である温帯や極地の海まで、何千キロも旅をする。
     トンガ王国ヴァヴァウ諸島の近くで戯れているところを撮影されたこのクジラは、冬の間南極の海で過ごすが、北米のクジラの中にはアラスカからハワイまで旅するものもある。このような旅の途中で出会う、特に危険な存在がシャチだ。そのため、親子は時々ささやき声で話すことで、敵に気づかれずに母親が子どもの様子をチェックすることができる。(PHOTOGRAPH BY GREG LECOEUR, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

  •  母親であることに犠牲は付きものだが、一部のタコは自分が死んでまで、子どもに生き延びるチャンスを与える。写真のタコ(種は不明)のように、たくさんの卵を産んだ母親は、海底にうずくまってひたすらこれを守り、酸素を豊富に含む新鮮な水を足でかいて送り続ける。そうして何週間も何カ月も卵の世話に身を捧げ、自分はほとんど食べることもせずに衰弱していく。
     米カリフォルニア州のモントレー湾で潜水艇を使って観察されたホクヨウイボダコ(学名Graneledone boreopacifica)の場合、4年以上もこの献身を続けたという。これは卵を抱いた期間としては、知られている限りあらゆる動物の中で最も長い。(PHOTOGRAPH BY DAVID LIITTSCHWAGER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

  •  多くのネコ科動物は単独で暮らすことで知られるが、アフリカライオンは社会的な動物だ。血縁関係のあるメスを中心とする群れで生活する。タンザニアのセレンゲティ国立公園で撮影された、子どもの世話をするこの母ライオンもそうだ。
    「メスこそがライオンの群れの中心です。オスのほうは、群れにやってきたり出ていったりを繰り返します」と、米ミネソタ大学ライオン研究所所長のクレイグ・パッカー氏は、2019年にナショナル ジオグラフィックに語っている。メスのライオンは、団結して危険から身を守る。この危険にはオスのライオンも含まれる。ほかのオスの子を殺そうとするからだ。メスは「クレイシ」と呼ばれる保育集団を作って、互いの子どもの毛づくろいや授乳までする(ただし、常に優先するのは自分の子どもだ)。
     若いライオンは遊び好きだが、約1歳になるまで自分で狩りはしない。このため、食べられるのは通常最後だ。この食べ物を巡る競争が、子殺しと共に、多くのライオンがおとなになるまで生きられない原因になっている。ある科学者らの推定では、2歳になるまで生きられるのはたった半分だそうだ。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

  •  カヤネズミは、英国諸島からフランスにかけて、また中国や日本でも、野原や農地でよく見られる。この親子の写真はフランスで撮影された。機敏でよじ登るのが得意な母ネズミは、地上90センチほどの高さに草をからめて球形の巣を作り、5、6匹の子を産む。オスは巣には入れない。
     昆虫、種子、鳥の卵など、母親が一度食べた餌を吐き戻して子に与える。これは哺乳動物では珍しい行動で、子どもの消化を助けているのかもしれない。(PHOTOGRAPH BY KLEIN & HUBERT, NATURE PICTURE LIBRARY)

  •  世界最大級のサソリであるダイオウサソリは、幼体を背中に乗せて育てる。「サソリにはいいイメージがないかもしれませんが、メスのサソリは非常に細やかに子育てをします」とスミセス氏は話す。
     ダイオウサソリは平均で9匹から32匹の、完全に体ができあがった子を生む。この幽霊のように白い幼体は、生後数週間は母親に完全に依存して育つ。自分で狩りができるようになるまでは、胎仔の時に供給された栄養の残りで生きていけるため、食べ物を必要としない。
     サソリではすべての種が子育てを行う。これが、サソリが何億年も生き延び、南極大陸以外のすべての大陸に分布している理由ではないかと見られている。「サソリは最も早く乾燥地に定着した動物ですが、メスが子の世話をすることが成功の鍵のひとつかもしれません」とスミセス氏は言う。(PHOTOGRAPHY BY ZSSD, MINDEN PICTURES)

  •  子どもを抱くジャイアントパンダの母親。中国の臥龍自然保護区で。よく知られているように、パンダは生まれたときには母親の900分の1ほどの大きさしかない。目は見えず、毛もなく、母親に完全に依存している。
     パンダはしばしば双子を産む。母親は2匹のうち生き残れる可能性が高そうな方を選び、もう一方をあきらめてその子の世話に専念しなければならない。見込みの薄い子を見捨てるというこの行為のために、動物界の「悪い母親」リストに載せられることもあるが、本当はできるだけよい母親になろうとしているのだ。
     パンダの母親が熱心に子育てをしないわけではない。生まれてから数カ月間、母親はほぼ絶え間なく子を抱いて温め、世話をする。飲食のためですら、巣を離れることはほとんどない。(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)