古代のオセアニア、ケルト、南北アメリカ大陸、アフリカの文化に関する文字の記録は少ない。だが、考古学上の痕跡がその偉業を如実に示している。
文＝PATRICIA S. DANIELS／訳＝稲永浩子
ギャラリー：ゴムの発明から巨大住居まで、文字記録に残らない古代の偉業 写真12点
ゴム製造の先駆けとなったメソアメリカ文明では、この技術を球戯に用いたことが、先住民が残した工芸品に描かれている。オルメカ時代に始まった手を使わないこの球戯は、周囲よりも低い位置に設けたコートで、少人数の2チームを競わせるゲームだった。（PHOTOGRAPH BY SÉBASTIEN LECOCQ / ALAMY STOCK PHOTO）
ミクロネシア連邦のポンペイ島にある古代の集落「ナンマトル」。（PHOTOGRAPH BY ROBERTHARDING / ALAMY STOCK PHOTO）
ワンジナの洞窟壁画
ネアンデルタール人がまだヨーロッパにいた約4万年前、オーストラリアには人々が定住し始めていた。北からの移民は新しい土地に適応し、世界で最も長く続く文化が発展した。彼らは金属や土器を使用せず、弓矢や車輪も開発しなかったが、神話と芸術に富む文化が培われた。神聖な場所には、「ドリームタイム」（時間を超越した世界）から祖先が訪れ、岩絵に姿を変える、と人々は信じていた。こうした精霊を描いた印象深い壁画「ワンジナ」がオーストラリア北西部のキンバリー州で発見されており、4000年前のものと考えられている。（PHOTOGRAPH BY GRANT DIXON/GETTY IMAGES）
ワンジナの洞窟壁画
ネアンデルタール人がまだヨーロッパにいた約4万年前、オーストラリアには人々が定住し始めていた。北からの移民は新しい土地に適応し、世界で最も長く続く文化が発展した。彼らは金属や土器を使用せず、弓矢や車輪も開発しなかったが、神話と芸術に富む文化が培われた。神聖な場所には、「ドリームタイム」（時間を超越した世界）から祖先が訪れ、岩絵に姿を変える、と人々は信じていた。こうした精霊を描いた印象深い壁画「ワンジナ」がオーストラリア北西部のキンバリー州で発見されており、4000年前のものと考えられている。（PHOTOGRAPH BY MICHAEL NOLAN/ROBERTHARDING/ALAMY STOCK PHOTO）
アイルランド西海岸沖のスケリッグ・マイケル島に残る修道院の墓地。（参考記事：「孤島、岩穴、奇岩、求道者が孤独を求めて隠れ住んだ秘密の場所 3選」）（PHOTOGRAPH BY UTBP/SHUTTERSTOCK）
グラウベルクの君主
ドイツのヘッセン州グラウベルクでの考古学的発見によって、この地にあったケルトのオッピドゥム（城塞都市）が、ケルト文明の重要な遺跡であることが明らかになった。砂岩製の「グラウベルクのケルトの君主」（写真の像は複製）は貴重な発掘物だ。この等身大の戦士像は、チュニック型のよろいを着て、盾と剣を装備している。その他の装飾品から、この人物は神官または統治者としての役割を担っていたとみられる。（PHOTOGRAPH BY UKARTPICS / ALAMY STOCK PHOTO）
テオティワカンでは、メソアメリカ文明でも屈指のピラミッド群が建造された。400年頃の最盛期には、テオティワカンは世界最大級の都市の一つに発展し、この地域の交易拠点として栄えた。（PHOTOGRAPH BY ARPAD BENEDEK/GETTY IMAGES）
メソアメリカ文明では、球戯が重視されていた。オルメク文明に端を発するこの球戯は、周囲より一段低くなったコートで2つのチームが競い、重さ4キロほどのゴムのボールを手を使わずに体で動かす競技だ。複数の絵からは、敗れたチームが処刑されたことが示唆される。その残酷さも驚きだが、同時に、丈夫で弾性のあるゴムボールを製造する技術があったことも注目に値する事実だ。現代の研究者たちが加硫（硫黄を使ってゴムに弾性や耐熱性を与える）の技術を発見する3000年も前に、メソアメリカでは、ラテックスをアサガオのつるの汁と混ぜるという方法が発見されていたのだ。（PHOTOGRAPH BY CHICO SANCHEZ/AURORA PHOTOS/ALAMY STOCK PHOTO）
米コロラド州のメサ・ヴェルデ国立公園に保存されている集落遺跡「クリフ・パレス」。1200年代に古代プエブロ人が暮らしていた住居跡だ。（PHOTOGRAPH BY ROBERT HARDING PICTURE LIBRARY, NAT GEO IMAGE COLLECTION）
チャコ・キャニオンのプエブロ・ボニート
米ニューメキシコ州のチャコ・キャニオンには、「プエブロ・ボニート」という大規模な多層式住居が残っている。ここには、11世紀には5000人以上の古代プエブロ人が住んでいた。この対称形をした「グレートハウス」には、中庭を中心に約600の部屋が設けられ、儀式の際には「キバ」という半地下の部屋に人々が集まった。建物と岩絵は、射し込んだ太陽光によって、春分、秋分、夏至、冬至などの天文学的な事象がわかるように配置されている。プエルト・ボニートや近くの建物は、遠くの集落と道路網で結ばれていた。こうした点は、プエルト・ボニートが、有能なリーダーが統治する安定した社会の中心地であったことを示唆している。（参考記事：「ギャラリー：100年前のナショジオ「チャコ・キャニオン遠征」 写真7点」）（PHOTOGRAPH BY VINCENT LAFORET, NAT GEO IMAGE COLLECTION）
マリ共和国の都市ジェンネの大モスク。泥で作られた構造物としては世界最大だ。（PHOTOGRAPH BY DMITRY TRASHCHENKO/SHUTTERSTOCK）
ジェンネのテラコッタ像
現在のマリ共和国の都市ジェンネでは、13世紀から15世紀に製作された表情豊かなテラコッタ（素焼き）像が数多く発掘されており、西アフリカの優れた伝統芸術を今日に伝えている。こうした人物像は、古代のマリ文化を知る手がかりとなっている。例えば、射手や騎馬兵の像から、マリ社会には十分に装備された資金豊富な軍隊があったことがわかる。頭を抱えて悲しみに暮れる像や、天然痘のような症状を表現した像もある。また、この写真の女性像やその他の人物像からは、マリの人々がさまざまなアクセサリーを身に着けて楽しんでいたことが伝わってくる。（PHOTOGRAPH BY PETER HORREE / ALAMY STOCK PHOTO）
