アフリカ、モロッコでの新たな発掘により、奇妙な恐竜スピノサウルスのさらに独特な姿が明らかになった。水中での捕食に適応するため、ヒレのような尾をもっていたというのだ。モロッコでの発掘風景や村の化石売りたちの写真、復元イラストを含む18点。
文＝Michael Greshko／訳＝三枝小夜子
ギャラリー：奇妙な恐竜スピノサウルス、奇妙な尾を発掘 写真とイラスト 18点
発掘現場の赤い砂岩の中から見えてきたスピノサウルスの足の骨。ここで見つかったスピノサウルスの化石は、北アフリカで発見された白亜紀の獣脚類の化石の中で最も完全に近い。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
モロッコのスピノサウルスの発掘現場で、つるはしを振り上げ、シャベルで土をすくうスタッフ。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
発見されたスピノサウルスの骨のまわりに集まる研究チームのメンバー。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
夏の日差しの下、発掘現場で長時間の作業に従事する研究者たち。水をできるだけ冷たい状態に保つため、斜面の大岩の陰に荷物を置き、陰が動けば荷物も動かす。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
発掘現場の余分な瓦礫を片付けるため、砂岩を投げ落とすイブラヒム氏。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
スピノサウルスと同じ時代の化石を求めてモロッコのシディ・アリの近くの現場を発掘するサミール・ゾフリ氏。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
スピノサウルスの尾椎の1つを調べるシモーネ・マガヌーコ、ニザール・イブラヒム、クリスティアーノ・ダル・サッソ氏。「私にとって、動物化石を調べることは一種の創造です」とダル・サッソ氏は言う。「破片から動物を蘇らせなければならないからです」（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
スピノサウルスの尾椎から突き出た長いとげ状の骨。生前は、この突起が尾の表面積を大きくし、オールのような形にしていた。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
スピノサウルスの尾の付け根から4番目の尾椎は、研究チームが発掘した尾椎の中で最も完全に近いものの1つだ。注意深く支えているのはクリスティアーノ・ダル・サッソ氏。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
1930年代にスピノサウルスの生前の姿を復元しようとしたシュトローマーは、化石が足りない部分はほかの獣脚類恐竜からの類推で補い、今では時代遅れとなった姿勢をとらせた。ニザール・イブラヒム氏が率いる研究チームは2014年からスピノサウルスは半水生の肉食恐竜だったと主張しており、今回の尾の化石によりその主張が裏付けられた。（JASON TREAT, NG STAFF; MESA SCHUMACHER）
モロッコの化石産地に近いタウーズの集落。自宅の外で、自分が見つけた化石の一部を見せてくれるコレクター。こうした化石は、スピノサウルスが暮らしたケムケム層の生態系の生物多様性を垣間見せてくれる。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
タウーズに近いある家には、訪問者、研究者、バイヤーに見せるための化石を入れた菓子箱が並べられている。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
タウーズの民家でスピノサウルスの大きな歯を調べるサミール・ゾフリ氏。この地域を訪れる古生物学者は、住民との間に良好な関係を築いて、科学的に重要な化石が個人の収集家ではなく公的機関に渡るようにしている。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
売り物にするスピノサウルスの歯を処理するモロッコ、イーマディ三葉虫センターのオーナー、モハンド・イーマディ氏。博物館を作りたいという夢をもつイーマディ氏は、長年、自分の店にくる珍しい化石を集めてきた。「過去を保存することは大切です」と彼は言う。「なくしてしまったら、二度と取り戻すことはできないからです」（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
モロッコのリサの近くにあるタヒリ化石博物館の外にたたずむトリケラトプスの像。ちなみにトリケラトプスは北米の恐竜。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
化石ディーラーが運営するタヒリ化石博物館にはモロッコ産の化石と世界各地の化石のレプリカが展示されている。スペースの半分は土産物屋で、旅行者は薄く切った恐竜の骨を購入できる。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
イタリアにある博物館向け模型の制作会社。スピノサウルスの実物大模型の尾のアップデート版を制作している。（Photograph by Paolo Verzone, National Geographic）
9500万年以上前、現在のモロッコにあたる地域を流れていた大河の水中で、先史時代のノコギリエイ「オンコプリスティス」に襲いかかる2頭のスピノサウルス・エジプティアクスの想像図。新たに発見された尾の化石は、スピノサウルスが泳ぐのに適した尾をもっていたことを示しており、この恐竜が多くの時間を水中で過ごしていたという仮説を裏付けるものとなった。(Jason Treat, NG Staff, and Mesa Schumacher, Art: Davide Bonadonna, Source: Nizar Ibrahim, University of Detroit Mercy)
