• サヌア旧市街、イエメン
    レンガや石膏による美しい幾何学模様が練り土の塔状建造物を飾る。イスラム文明の宝石と言われたサヌアには、2500年以上にわたって人々が住み続けており、聖書やコーランの文化とも密接な関わりがある。2015年には、空爆によって死傷者が出ただけでなく、歴史的建造物にも被害が及んだ。ユネスコの事務局長イリナ・ボコバ氏は、プレスリリースで「壮大な多層建築や荘厳な庭園が瓦礫と化した姿を見て、衝撃を受けています。このような破壊は、人道的状況を悪化させるだけです」と述べている。(PHOTOGRAPH BY MOHAMMED HAMOUD, GETTY IMAGES)

  • コソボの中世建造物群
    デチャニ修道院、ペーチ総主教修道院、リェヴィシャの生神女教会、グラチャニツァ修道院というセルビア正教会の4つの修道院や教会は、13世紀から17世紀にかけて発展した中世西洋の伝統とビザンチン様式が融合したものだ。教会内部を飾る躍動的なフレスコ画は、バルカン半島における芸術や建築の発展に重要な役割を果たした。コソボの中世建造物群は、「地域の政情不安により、管理や保全が難しい」という理由から、2006年に危機遺産に登録された。(PHOTOGRAPH BY DANIEL GONZALEZ ACUA, NURPHOTO, GETTY IMAGES)

  • 東レンネル、ソロモン諸島
    東レンネルは、ソロモン諸島でもっとも南にある世界最大の珊瑚島。地域に固有な多くの生物が、石灰岩の小島、密林、汽水湖で暮らしている。この一帯で森林伐採が進んでいることにより、2013年に危機遺産に指定された。(PHOTOGRAPH BY XINHUA, EYEVINE, REDUX)

  • ベリーズのバリア・リーフ保護区
    マングローブの林、沿岸礁湖、沖合の環礁からなる北半球最大のバリア・リーフ(堡礁)。7つあるユネスコの保護区が礁全体の12%を占めており、ウミガメ、マナティー、ワニなどの絶滅の危機に瀕している海洋生物の貴重な生息地となっている。マングローブの伐採と過度の開発により、2009年に危機遺産に登録された。(PHOTOGRAPH BY JA DAVENPORT, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

  • アイル・テネレ自然保護区、ニジェール
    サハラ砂漠の黄金の砂が輝くテネレは、アフリカ最大の保護区だ。たくさんの植物や動物が生息し、絶滅の危機に瀕している3種類のアンテロープもいる。政情不安、密猟、違法な放牧により、1992年に危機遺産リストに登録された。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL FAY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

  • 古代都市ダマスカス、シリア
    アフリカとアジアの交差点に位置するダマスカスは、紀元前3千年紀に築かれた中東最古の町の一つ。約125の建造物群が、ヘレニズムからローマ、ビザンチン、そしてイスラム文明にまたがる豊かな歴史を象徴している。内戦が続く2013年、シリアにある6つの世界遺産がすべて危機遺産リストに登録された。その一部は登録後に戦闘によって破壊された。2015年には、著名なシリア人考古学者2名が殺害されている。(PHOTOGRAPH BY SALLY HAYDEN, SOPA IMAGES, LIGHTROCKET, GETTY IMAGES)

  • チャン・チャン遺跡地帯、ペルー
    土でできた厚い壁に施されている人や動物に似た装飾は、かつての栄光の証。チムー王国の首都だったチャン・チャンは、コロンブス以前の米大陸で最大の土建築都市だ。異常気象に弱いことや、発掘品の売買が横行していること、建築の計画が持ち上がっていることから、1986年に危機遺産リストに登録された。(PHOTOGRAPH BY KIKE CALVO, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

  • ハンバーストーンとサンタ・ラウラの硝石工場群、チリ
    パンパと呼ばれるチリの大平原は世界屈指の乾燥地。そこでは、60年以上にわたって、何千人ものパンピーノ(チリ、ペルー、ボリビアから集まった硝石工場労働者)が共同生活を送り、働いていた。世界最大の硝石工場であり、1872年に開業したときは、農業用肥料として使われた硝酸ナトリウムを生産し、北米、南米、ヨーロッパに供給していた。脆弱な建物が地震で被害を受けたことから、2005年に危機遺産に登録された。(PHOTOGRAPH BY YADID LEVY, ANZENBERGER, REDUX)

  • サーマッラーの考古学都市、イラク
    サーマッラーのモスク、ミナレット(尖塔)、宮殿は、1世紀にわたってチュニジアから中央アジアまでを支配したアッバース朝の遺産だ。バグダッドの歴史的建造物が破壊されてから、サーマッラーは建設当初の建築物、芸術、配置が残る唯一のイスラム帝国の首都となった。「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」に基づき、2007年に危機遺産に登録された。(PHOTOGRAPH BY LYNN ABERCROMBIE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

  • スマトラの熱帯雨林、インドネシア
    グヌン・ルセル、ケリンチ・セブラ、ブキット・バリサン・セラタンの3つの国立公園からなる2万4000平方キロメートル以上の地域が、東南アジア最大の保護区を形成している。スマトラは生物多様性が豊かな「ホットスポット」であり、スマトラオランウータン、スマトラトラ、サイ、ゾウ、マレーグマなど、絶滅の危機に瀕している地域固有の種が生息している。「密猟、違法伐採、農地による侵食、道路の建設による脅威から守る」ために、2011年に危機にさらされている世界遺産リストに登録された。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE DAILEY, EYEVINE, REDUX)