コアラの生息地が広がるオーストラリアの東海岸沿いで、多くの森林火災が発生している。この人気者の有袋類は、動きが遅い。森林火災から身を守る唯一の方法は、すみかとするユーカリの木を登ることだけだ。ところが、ユーカリの木には油分が大量に含まれており、猛烈な森林火災の際には、激しい爆発を引き起こすことがある。コアラの生息範囲はとても広いため、森林火災の影響で絶滅の危機にさらされることはない。それでも、非常に大きな被害を受けたことに変わりはない。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

森林火災の影響を受けている4つのカンガルーの亜種の1つ、アカカンガルー。動きが速く機動性もあり、時には炎から逃げられることもある。だが、フェンスなどにより、移動が制限される可能性がある。実際に逃げ出せた多くのカンガルーは、元の場所に戻ることもできず、食べ物も水もなく、負傷したまま放置されている。獣医は、避難してきたカンガルーの多くをやむを得ず安楽死させた。森林火災で大きな被害を受けたビクトリア州東部に位置する町マラクータでは、避難してきたカンガルーが、どこに行くべきかわからず、何十頭もゴルフ場に集まった。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

ウォンバットは、出入口がいくつもある広大な地下の巣穴に暮らす。この巣が、ウォンバットはもちろん他の動物にとっても、煙や炎、熱からの避難先になる。ウォンバットの巣穴は、森林火災や干ばつなどの異常事態や、捕食者を避ける際の避難場所として、よく他の種に利用されることが、研究によりわかっている。森林火災を生き延びたウォンバットは後に、木々が焼け落ちた地で捕食者を避け、食べ物を見つけなければならないなどの試練に直面するかもしれない。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

逆さまにぶら下がるハイガシラオオコウモリ。森林火災の原因となった異常に暑く乾燥した気候に主に苦しめられている。酷暑を乗り切ることができず、今シーズンには大量死が起きた。メルボルン周辺のある公園では、気温が43°Cを超えた3日間で4500匹も死亡した。（参考記事：「オーストラリアでコウモリ大量死、熱波で修羅場」）（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

フクロギツネの生息域は広範囲にわたり、森林火災の発生地帯を含むオーストラリア全土に分布する。これまでは、木のうろに避難し、猛烈な森林火災を生き抜いてきた。だが将来、避難する木のうろが、見つからなくなるかもしれない。うろは通常、古木にのみできる。しかし古木は、森林火災で倒れてしまうことが多い。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

森林火災の発生地帯に生息するワラビー（写真はアカクビワラビー）は、食糧不足に陥っている。ニューサウスウェールズ州では、「オペレーション・ロックワラビー」と銘打ち、当局が大量のサツマイモやニンジンを空から投下し、絶滅の危機にあるオグロイワワラビーに餌を与えている。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

オオフクロモモンガは、オーストラリア原産の滑空する有袋類の1つで、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストで「近危急種（near-threatened）」に指定されている。森林火災の発生地帯にあるユーカリの森に暮らし、大きな古木に巣を作る。過去3世代で、個体数は30%も減少した。生息地の喪失により、この危機的状況がさらに悪化するかもしれない。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

ネズミカンガルーは、ノウサギほどの大きさのワラビーの仲間だ。個体数はすでに減少しつつあり、森林火災により壊滅的な被害を受けるかもしれない。この写真のハナナガネズミカンガルーは、10月の森林火災でニューサウスウェールズ州にある主要な生息地を焼かれ、1つの群れが全滅した可能性がある。別種のアシナガネズミカンガルーの場合は、小さな生息地が湿地に斑状に点在するが、森林火災で荒廃してしまった。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

ニューサウスウェールズ州やビクトリア州では、熱波によりオウムやインコが死んでいる。地上に落ちた死体を見つけた住民が、ソーシャルメディアに写真を投稿した。キバタン（オウムの仲間）などの鳥が、極度の暑さと干ばつで、飢えと渇きに苦しんでいる。カンガルー島に生息するテリクロオウムは、島内の知られている8カ所の群生地のうち6つが森林火災で焼かれ、絶滅の危機に瀕している。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

森林火災は、カモノハシが生息するオーストラリアの川に深刻な影響をもたらす可能性が高い。カモノハシの生息範囲は、東海岸全体に沿って広がっている。森林火災により川岸の木が焼けると、日陰が失われ、カモノハシには耐えられないほど（通常28°C超）水温が上昇する可能性がある。森林火災で特に大きな被害を受けた地域では、カモノハシの局所絶滅の危険がある、と専門家は言う。（参考記事：「川や海にも深刻な被害の恐れ、オーストラリアの森林火災」）（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

IUCNのレッドリストで「近絶滅種（critically endangered）」に指定されているブーラミスは、わずか2000〜3000匹しか野生に残されていない。ビクトリア州北部やニューサウスウェールズ州南部のいくつかの山にのみ生息する。完全に高山の生息地で生活するオーストラリアで唯一の哺乳類だが、その生息地の多くは森林火災で燃えてしまった。森林火災を生き延びたものは、食糧不足に直面し、木々が焼け落ちた地で効率よく狩りをする野生化したネコやキツネの餌食となっている。（参考記事：「絶滅寸前の有袋類、化石の地への移住で保護へ、豪」）（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

ハリモグラは危険を感じると、足で土を深く掘り、地中の穴に逃げ込む。針は、炎から皮膚を守る助けにもなる。しかし、この本能も、猛烈な森林火災の前には、役に立たないかもしれない。2019年12月、カンガルー島の半分が猛火に襲われ、膨大な数の野生生物が炎にまかれた。カンガルー島に生息するハリモグラにも、大きな被害が出たかもしれない。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

キガオミツスイは、深刻な森林火災と干ばつが発生したニューサウスウェールズ州の東海岸沿いの森やサバンナに生息するが、IUCNのレッドリストで「近絶滅種（critically endangered）」に指定されている。専門家の推定によると、2010年の時点で野生に残るのは、わずかに350〜400羽のみだ。特定の種類のユーカリの木を食べ、その近くに巣を作る。だが、このユーカリが、森林火災で大量に枯れてしまったかもしれないと、専門家は危惧している。主要な生息地の喪失により、繁殖や営巣、食事にも影響が及び、キガオミツスイは絶滅の瀬戸際に押しやられている。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）