哺乳類の中で唯一飛翔できるコウモリは、コウモリにしては迷惑な話だが、古くは得体のしれない極悪の生き物とされていた。米スタンフォード大学の古典学者エイドリアン・メイヤー氏によると、「嫌われ者のネズミに似ていて、爪のついたおかしな翼で自分の体を黒いマントのように包み、木から逆さまにぶら下がるからでしょう」。写真は、米コロンバス動物園のキンイロマクオオコウモリ（Pteropus pumilus）。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

「クモは通常、黒か灰色で日中は姿を隠しています。暗い部屋の隅や廃墟など、いかにも幽霊が出そうな場所に巣を作ります。毒を持つ種類もいるため、昔から恐れられてきました」。写真は、米フロリダ州ビーナスにあるアーチボルド生物学研究所のコモリグモ科の一種 (Hogna carolinesis)。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

「古代ローマと中世欧州では、夜になると魔女がフクロウに姿を変えて空を飛び回ると言われていました。フクロウの甲高い鳴き声は不吉な知らせと信じられ、ユリウス・カエサルや皇帝アウグストスの死も、フクロウの鳴き声によって予言されていたと言います。ローマ人は、魔よけとしてフクロウの死体を扉に打ち付けていました。この風習は、19世紀のイングランドにも残っていたそうです」。写真は、米ヒューストン動物園にいるミナミアフリカオオコノハズク（Ptilopsis granti）。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

「ネコのなかでも特に夜の闇のような黒猫は、中世欧州では魔女のお供とされ、一部の人々は魔女が死ぬと黒ネコとしてよみがえるとさえ信じていました」。写真は、米ネブラスカ州バーウェルの黒ネコ（Felix domesticus）。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE）

「ヒキガエルは、体中が醜いいぼに覆われ、クモ同様毒を持っていることでも知られています。古代ギリシャ人とローマ人は、ヒキガエルには肝臓がふたつあり、ひとつには毒が、もうひとつには解毒剤が詰まっていると考えていました。そのため、欧州では古代から中世、時にはそれ以降もよくヒキガエルをまじないや魔術に使っていました。17世紀のフランスでも、黒魔術やサタン崇拝に関わる様々な毒薬に入れられていました。このように、毒薬や魔術との関わりから、ヒキガエルには今でも悪いイメージが付きまとっているのです」。写真は、米アトランタ動物園で撮影されたヒキガエル科の一種(Incilius coniferus)。 （PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

「黒光りする羽、ビーズのような目、そして死肉を食い荒らす習性のおかげで、カラスは昔から魔術や闇と結び付けられてました」。写真は、米オクラホマ州バートルスビルのサットン鳥類研究所のアメリカガラス（Corvus brachyrhynchos）。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

「その昔、ネズミは廃屋や不潔な場所、幽霊が出ると信じられているような建物にすみつくと言われていました。夜行性で人目を避けるため、古くから疫病や伝染病をもたらすとしてと恐れられてきました」。写真は、米オクラホマ州バートルスビルのサットン鳥類研究所のクマネズミ（Rattus rattusu）。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

「現代の民俗学者は、古代ローマ人や中世イタリア人に恐れられていた伝説の鳥ストリクスのモデルはフクロウやカラス、ネズミだったと考えています。オウィディウスをはじめとする古代の文筆家は、ストリクスについて、大きな頭と鋭い目つき、獲物を残酷に引き裂くくちばし、恐ろしいかぎ爪を持った獰猛な夜の鳥と表現しました。真夜中過ぎにストリクスの恐ろしい叫び声が聞こえたら、それは何か不吉なことの前兆であるとされていました。また、特に子どもがひとりで夜中に出歩けば、ストリクスに襲われると言われていました」。写真は、木の枝にとまるオオフクロウ（Strix leptogrammica）。（PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE）