• 大量に密売される動物センザンコウ(米国)
    写真家ジョエル・サートレイ氏は、絶滅の危機にある動物たちを記録するプロジェクト「フォト・アーク」のために、過去15年ほどで1万種もの動物の写真を撮ってきた。写真はその中の一枚で、2015年に米フロリダ州にある保護センターで撮影したキノボリセンザンコウの赤ちゃん。母の背に乗っている。「まるで別の惑星に降り立ったかのようでした」と同氏は振り返る。「今まで見てきたどの哺乳類とも異なっていたのです」。アジアやアフリカに生息するセンザンコウは、肉やうろこを目当てにした密猟が激しく、地球上で最も密売されている哺乳類の1つだ。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE) (参考記事:「需要高まり絶滅危機、センザンコウ密売の実態」

  • 水質汚染の街で(米国)
    米国ミシガン州フリントの水には、鉛などの汚染物質が長年にわたり含まれていたことが、調査報告により明らかなった。2016年1月、写真家ウェイン・ローレンス氏は、きれいな水を求めてもがき苦しむ住民の姿を記録した。同氏が消防署内で最初に見たのは、一時的に無料で提供されている1日分のペットボトルの水を担ぐ、アントニオ(13歳)と妹のジュリーとインディア(共に12歳)のアブロン兄妹だった。この一家が飲料や調理、入浴に使える安全な水はこれだけ。ローレンス氏は、先行きの暗いフリントを訪れたこの時のことを、こう振り返る。「本当に胸が張り裂けるような思いでした。どの家庭を訪れても次から次へと聞こえてくるのは、同じような悲惨な話なのです」(PHOTOGRAPH BY WAYNE LAWRENCE) (参考記事:「オバマ大統領が非常事態宣言、水道鉛汚染の現実」

  • 9歳、トランスジェンダーとして生きる(米国)
    世界中のLGBTQの人々の写真で高い評価を得ている写真家ロビン・ハモンド氏は、ナショナル ジオグラフィックの2017年1月号の特集「ジェンダー革命 男と女で何が違う? 9歳の視点」を担当した。8カ国の9歳の少年少女を撮影する中で出会ったのが、写真のエイブリー・ジャクソン。エイブリーは、米国ミズーリ州カンザスシティーで4歳まで少年として過ごしたが、家族の支援もあり、2012年からトランスジェンダーの少女として暮らし始めた。「自信とエネルギーが、にじみ出ています」とハモンド氏は話す。「彼女の写真は、こう語っています。『私は誇りに思う。私は幸せだ。私は普通の小さな女の子なのだ』と」ナショナル ジオグラフィック英語版はこの写真を同号の表紙に採用。「興奮しているのか、恐れているのか、心配しているのか、感謝しているのか」の判断を読者に委ねたと、編集長のスーザン・ゴールドバーグは語る。(PHOTOGRAPH BY ROBIN HAMMOND) (参考記事:「2017年1月号 ジェンダー革命 男と女で何が違う? 9歳の視点」

  • ツンドラの王女(ロシア)
    カーテンは素晴らしいケープに、ボール紙は威厳のある王冠になる。仮装して「ツンドラの王女」を名乗ったのは、8歳のクリスティナ・フージ。フージは、シベリアでトナカイを飼う極北の遊牧民ネネツの一員で、寄宿学校の夏休みで帰省していた。ロシアの北極圏で育った写真家エフゲニア・アルブガエバ氏は、2017年10月号の特集のために遊牧生活を送る先住民ネネツと共に過ごした。彼らは、何世紀も前からヤマル半島を毎年1300キロも移動して暮らしてきた。だが現在、その生活は気候変動とガス田の開発によって脅かされている。(PHOTOGRAPH BY EVGENIA ARBUGAEVA) (参考記事:「2017年10月号 天然ガスとトナカイの民」

  • 「私の遺体を薄く削ってもらいたい」と言った女性(米国)
    スーザン・ポッター氏は、死亡後に遺体を凍結して薄く切り、研究用データベースを作るのに使って欲しいと宣言した女性だ。ナショナル ジオグラフィックの写真家リン・ジョンソン氏と写真編集者カート・マッチラー氏は、生前から15年間にわたり彼女を追った。ポッター氏が米コロラド大学の人体断面画像をデータベース化するプロジェクト「Visible Human Project」に志願した時、72歳だった。障害者の権利を訴える活動家で、自身も車椅子を利用しており、終わりの時が近いと思っていた。しかし、同氏は、87歳まで生きた。写真家とライターは、ポッター氏の死と、遺体を凍結して2万7000枚の切片に切り分ける過程を取材。特集は2019年1月号に掲載された。(PHOTOGRAPH BY LYNN JOHNSON) (参考記事:「バーチャルな世界に生き続ける、ある女性の物語」

この写真の記事

 2010年からの10年間で、ナショジオの写真家たちが雑誌とウェブサイトのために撮影した写真は2161万3329枚を数える。そんな中から、この10年を代表する「ベスト」や「お気に入り」の写真を選ぼうなんて、ちょっと気が遠くなってしまう。

 それでも私(スーザン・ゴールドバーグ、英語版編集長)と編集部のメンバーは、15点の写真と動画を選び出した。米国を象徴する風景の中でバイソンを食べるクマ、絶滅が危ぶまれるセンザンコウの母子、移植を待つ死亡女性の顔、幼くして花嫁にされるイエメンの少女、そして、9歳のトランスジェンダーの少女はまっすぐな視線を私たちに投げかける。

文=SUSAN GOLDBERG(ナショナル ジオグラフィック英語版編集長)/訳=牧野建志

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