Arctictis binturong
フィリピン、アビロン動物園のパラワンビントロング(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
フィリピン、アビロン動物園のパラワンビントロング(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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早わかり

分類: 哺乳類
IUCNのレッドリストによる
危機の評価:
危急種
食性: 雑食
寿命: 野生: 18 年
体長: 70 ~ 90 センチ
体重: 10 ~ 32キログラム

ビントロングとは

 その外見からクマネコとも呼ばれるビントロングは、ジャコウネコやジェネットが属するジャコウネコ科の仲間。銀色の縞が入っていることもあるボサボサの黒い毛皮に、針金のようなヒゲを生やした姿は、やや薄汚い印象を与えることもある。

 リスやサルほどすばしっこくはないが、木の上での暮らしに適した体を持つ。体長と同じくらい長い尾は、木の枝や幹をつかめる5番目の手足として働く。尾を枝に固定しておくことにより、高い木の上でも安全に眠ることができる。また、頭を下にして木を降りる際には、後ろ足を180度回転させて枝をしっかりと握り込む。こうすることによって、爪が樹皮に深く差し込まれる。

 クマとは近縁関係にないものの、脚をあまり曲げずに、足先全体を地面に付けてゆったりと歩く様や、胴体が低く地面に近いところは、クマの仲間によく似ている。

 体格は小さいが、あるいは小さいからこそ、人間と対峙したときにはどう猛になることで知られている。そのときの機嫌によって、うなったり、悲しそうに鳴いたり、シャーっという音を出したり、ゴロゴロとのどを鳴らしたりすることもある。幸いなことに、ビントロングが活発に活動するのは主に夜間かつ樹上であるため、人間との遭遇はそう頻繁には起こらない。

すみかと食べ物

 南アジアや東南アジアの熱帯雨林に生息し、一日の大半を樹冠に隠れて過ごす。樹上での生活スタイルに多くの点で適応しているが、木から木へ飛び移ることはないようだ。初めて足を踏み入れる場所を探るときには、必ず森の地面に降りてくる。

 食肉目に属してはいるものの完全なる雑食性であり、小型の哺乳類から、鳥、魚、ミミズ、昆虫、植物の芽、葉、果実まで何でも食べることが知られている。さらに、ある研究では、いくつかの果物の種子は、ビントロングの消化器官を通過した後の方がより早く発芽することがわかっており、これは彼らが種子の散布者として重要な役割を果たしていることを示唆している。

繁殖

 ビントロングがどのように子供を作るのかについてはよくわかっていないが、求愛行動は主に樹上で行われていると思われる。なわばり意識が強いと考えられるため、においのマーキングがメスを見つけるのに大きな役割を果たしているのかもしれない。

 ジャコウネコ科のほかの動物たちと同じく、尾の付け根に強力な臭腺を持っており、これを使って自分のなわばりにフェロモンを振りまく。ただし、ほかの哺乳類とは異なり、ビントロングの分泌物はバターをまぶしたできたてのポップコーンのようなにおいがする。

 個体数密度の低さという問題を回避するために、ビントロングはもうひとつ別の戦略をとっていると考えられている。「遅延着床」だ。これにより、交尾は年間を通して行うが、受精した胚が子宮壁に着床するのは、餌が最も豊富な1月、2月、3月となる。この仕組みであれば、偶然の出会いによる交尾が無駄にならず、また食料不足の時期にメスの体に過度な負担をかけずに済む。

生存の危機

 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは危急種に分類されている。生息地全域において希少であるとされ、個体数は減少傾向にあると考えられている。

 もっとも差し迫った脅威は、森林伐採や農業の影響による生息地の喪失だ。ビントロングの生存には、高い木が生い茂る健康な森林が必要とされる。

 生息域の一部では、ビントロングが捕獲され、ペットとして、あるいは伝統的医薬品の素材として売られている。また、肉や毛皮を目当てに殺されることもある。

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