地球のいのち

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宮脇昭氏は80歳を超えてなお、ボルネオの熱帯雨林などに出かけて植樹をしている。「あと30年は植樹を続ける」と言う。環境問題で使われる「地球に優しい」「森を大切にしなければならない」といった情緒的なフレーズは、宮脇氏にとっては「人間の驕りから出る言葉」としか思えてならない。「頭で考えずにカラダを動かし、チャンスを作れ」と説く宮脇氏に未来に生かす「いのちの力」について聞いた。

あらゆる生物との共生こそが
いのちの大切さを実感できる証し

森林の減少、温暖化、食料自給率、人口問題……。私たちが進む未来に明るい希望はあるのでしょうか?

 政治家や経済界だけでなく家庭までもが、“たかが紙切れ”にすぎないお金や株のことばかり考えているから、世の中が悪くなるのです。

 今の経済危機にしても、生物が絶滅したわけでもないのに、なぜこんなに大騒ぎしなければならないのでしょう。いつの時代でも、いのちこそが絶対なのです。

 数ある宇宙の星の中でたったひとつしかない小さな地球という星に、本当の奇跡によって40億年前に原始の生命が誕生しました。それが今まで途切れることなく続いているから現在のあなたと、あなたの愛する人がいて、人類とそれを取り巻く生物がいるわけです。

 しかも、その生命体の大部分は『ナショナル ジオグラフィック』誌にも書かれているように、水の中で生きてきた。それが、氷河期が来たり隕石が落ちたりと地球環境に大変動が起こったことで進化し、一方で多くの生物が絶滅していきました。地球上の生物は大変動をチャンスにしながら生き延び、4億年前、陸上に這い上がったのです。

 その原始の生命の子孫である私たち人類が、地球温暖化で大騒ぎをしている。3億年前にできた石炭や石油問題で今大騒ぎをしているけれど、地球の歴史から見れば、そんなに騒ぐことではない。

 つまり明るい未来があるかどうかは、すべて私たち次第なのです。自分の足元の地面に1本の木を植える努力をすれば、明るい未来もある。しかし、今までのように木をどんどん伐採して、地面をコンクリートで固めていけば間違いなく未来はない。実に単純な話です。

その単純なことがうまくいっていないのは、どうしてでしょうか?

 うまく事が運ばないのは油断をしているか、手抜きをしているからです。自然のシステムの枠の中で正しく対応すれば、間違いなく生き残れる。これは真理です。経済問題も、環境問題も一緒で、本質は全く変わりません。

 二酸化炭素に端を発した環境問題で、今世間は大騒ぎしています。

 そもそも、4億年前まで地上に生物は棲めませんでした。これは、太陽から直接紫外線が降り注いでいたからです。一方で海の中では、盛んに生物の光合成が行われていました。これによって、海の中で蓄積された酸素が徐々に空気中に放出され、その酸素が大気の上まで上昇して地球全体を覆いました。これがオゾン層です。そのオゾン層が紫外線を吸収してくれたおかげで、生物は海から這い出て地上で暮らすことができるようになったのです。

 最初に這い上がったのは植物です。その植物が陸上で長い時間をかけ多様に進化したのがシダ植物の時代※1です。これらの植物が二酸化炭素をどんどん吸収し堆積し、氷河期などの大異変で土の中で炭化しものが、現在、化石燃料といわれる石油、地中のガス、石炭です。

その二酸化炭素で世界は大騒ぎです・・・。

 今、議論されているのは二酸化炭素の排出を少しでも減らそうというものばかり。少しだけカーボン(炭素)を減らせば、地球の危機は回避できると思っ ていたら大間違いです。

 「二酸化炭素を引き算すればいい」という発想だけが独り歩きして、経済学者や政治家、または環境リーダーといわれる人さえも、その考えを鵜呑みにしてしまっています。

 まだヒトが出現していなかった今から3億年前、シダ植物が高温多湿の気候下に太陽光のエネルギーを吸収し、空気中の二酸化炭素を吸収しながら光合成を行い大森林を作りました。それが幸か不幸か、18世紀末頃※2に土の中で炭化していた植物の遺骸である石炭や石油を人間が燃やし始めたのです。するとあっという間に、燃焼によって発生したカーボンが、空気中の酸素と結合して二酸化炭素になった。今大騒ぎになっている、大量の二酸化炭素排出の大本です。

 単純に考えれば、もう一度木を植えて森を作り、その中に二酸化炭素を閉じ込めればいいのです。実に単純、ただそれだけの話です。

 頭でっかちな科学者たちは、机上の実験や計算結果だけで「木を植えてもたいした効果はない」などと言っています。しかし、森が存在していれば、ローカルに防災・環境保全機能となり、グローバルには地球温暖化を抑制する。一番だいじなのは“いのちの森”作りです。

 危険なのは、何十億年もかけて作られたストック(石炭や石油)を何も考えず大量に消耗し続けることに、なんら罪悪感を持たないことです。

 少し我慢しながら健全に生きていく方法を考え、ストックをしっかり未来に託す、という発想に転換しなければいけない。現実的にそのストックはあまり残されていません。ストックを作ってくれた森は伐採され、環境破壊は止まらない。場当たり的な対症療法だけでは、今後人間を取り囲む環境はどんどん悪化してしまいます。

※1 シダ(羊歯-、歯朶)古生代から生き延びてきた植物。しかしその進化については謎の部分が多く、緑藻類の起源説の他諸説ある。

※2 18世紀の末頃 1760年代から1830年代にかけてイギリスで起こった産業革命を指す

写真) 熱帯雨林再生を三菱商事の支援で1990年からマレーシア農家 大学(UMP)と続けている。――マレーシア、ボルネオ島

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