地球のいのち

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 生命の惑星「地球」。170万を超えるともいわれるたくさんの種類の動植物が複雑な生態系の中で結ばれ、育まれています。多様ないのちの存在は、この星の最大の特徴でもあります。
 食料として、資源として――。これまで人類は、その「いのち」の恵みを贅沢に享受しながら、繁栄してきたといっても過言ではありません。
 いま、その豊かさが根底から崩れ去ろうとしています。専門家の予想をはるかに凌ぐスピードで生態系が崩壊しつつあり、ひいては我々の生活をも脅かし始めています。
 現代人が、日常生活の中を通して、「いのちの力」を感じるためのヒントを日比氏に聞いてみた。

20分に1種の動物が消える

日比さんが活動されている地域でも絶滅種の問題を始めとして、いのちの現場を身近に感じる時があるように思うのですが、いかがでしょう?

私がプロジェクトでよく行くフィリピンの国鳥、固有種であるフィリピン鷲は、現在絶滅危機種のリストに入っていて、地元でも既に滅多に見ることができない鳥になっています。 このワシが住む森が大変な勢いで失われています。

現在ではフィリピンの原生林の大部分は国立公園に指定されたり、大統領令によって保全命令が下されていたり、何らかの形で保全されています。しかし経済発展が続き人口が増加しているフィリピンでは、湯を沸かしたり、食事の煮炊きをしたりするなど生活に必要なエネルギー源として森林の伐採が続けられている場合も多く、森林の減少には歯止めがかかっていません。

100年前にはフィリピン全土の7~8割を占めていた原生林は、現在では2割を切るまでになってしまいました。

CIが活動しているルソン島の北東部シエラマドレ山脈にも、かつては豊かな森林が残っていましたが、低地の木々はほぼ伐採されてしまっていて、今は残された山岳地帯の森林が伐採の対象となっています。過去には日本もフィリピンの森林伐採に積極的に関わっていました。フィリピンで進んでいる森林破壊は遠い国の出来事ではなく、日本も密接に関係していることなのです。

絶滅危惧種に指定されている動植物が危機に瀕している現場を直接目にすることはないと思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。生き物の生息地が破壊される現場に立つと、地球のいのちが削られているという現実を強く感じます。

日本国内ではいかがでしょう。

先日、沖縄本島北部のやんばるの森を訪れる機会がありました。世界でここにしか生息しない、飛べない鳥、ヤンバルクイナの棲む森です。やんばるには日本国内とは思えないような、うっそうとした原生林が広がっていますが、この原生林が残っているほとんどの場所が実はアメリカ軍の演習地になっています。米軍にとって、この原生林はジャングルを想定した演習や訓練にはもってこいだからです。つまり、演習場だから結果的に原生林として残されてきたとも言えます。

一方で、日本は国土の約7割をいまだに森林が覆う森の国ですが、美しい森を様々な形で利用してきた歴史があり、自然のままの生物多様性豊かな「原生林」は、あまり残っていません。今日でも、土地開発によって森林が失われることは珍しいことではありません。

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