/2005年10月号

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特集

鳥インフルエンザ

OCTOBER 2005

文=ティム・アペンゼラー 写真=リン・ジョンソン

ジアを中心に、不気味な広がりを見せる鳥インフルエンザ。人間への感染例はまだ少ないが、突然変異を起こせば、世界的な大流行をもたらす殺人ウイルスになりかねない。(この記事は2005年10月号に掲載されたものです。)

 インフルエンザの流行は厄介な年中行事のようなもので、予防接種をするまでもないと軽視する人も多い。だが、インフルエンザは実は怖い病気だ。ウイルスは、咳やくしゃみで飛び散る小さな飛沫を介して簡単に広がる。日本では毎年およそ400万から1400万人の患者が出て、多い年には1000人以上が死亡する。死亡者のほとんどは高齢者だ。ウイルスは次々に変異するので完全に免疫ができることはなく、毎年新しいワクチンを用意しなければならない。

 ここまでは普通のインフルエンザの話だが、東南アジアで死者を出したウイルスは別物だ。犠牲になったのは主にニワトリで、すでに1億羽以上がこの病気で死んだり、感染防止のために処分された。鳥が感染するインフルエンザウイルスは、人間が感染するものよりはるかに種類が多い。だが、40年間インフルエンザウイルスを研究してきた米国セント・ジュード小児研究病院のロバート・ウェブスターも、こんなウイルスは見たことがないという。

 「出現した当初から病原性がきわめて高く、私の知るかぎり、おそらく最悪のインフルエンザウイルスです」と、ウェブスターは話す。感染したニワトリの死亡率は非常に高く、ウイルスとの接触から数時間で腫れや出血を起こして死ぬこともある。感染した哺乳類の死亡率も高い。ゴアンが発病する数日前には、一家の農場のニワトリが死んでいた。このように感染した家禽類から人にうつるケースも発生し、感染が判明した患者の約半数が死亡している。

 「H5N1型」と分類されるこのインフルエンザウイルスは、今のところ鳥から人への感染例は少数で、人から人にうつる確率はさらに低い。一般に「鳥インフルエンザ」と呼ばれているのは、そのためだ。「幸いにも、人から人へはそう簡単にはうつりません。そうでなければ大惨事になっていたでしょう」とウェブスターは言う。

 H5N1型は、今後も、人から人への大規模な伝播は起こさないままに終わるかもしれない。だが専門家は、最悪のシナリオを想定して対策をとる必要があると警告している。

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